内閣府が13日発表した3月の景気動向調査は、2013年1月以来6年2カ月ぶりに「悪化」という基調判断となった。米中の貿易摩擦の影響が深刻化し、中国経済の急激な減速が日本経済にも波及したものとみられる。
 厚生労働省が10日発表した3月の毎月勤労統計調査(従業員5人以上の事業所)の速報でも、物価の影響を考慮した実質賃金が3カ月連続で減少した。1人当たりの現金給与総額(名目賃金)も減少するなど、経済の減速が鮮明となってきた。
 こうした状況下で、予定通り10月の消費税の10%への増税が可能かどうか、政府は厳しい判断を迫られよう。増税に向けて各種の準備が着々と進んではいるものの、世界経済が悪化しつつある中での増税は、いま採るべき選択肢とは思われない。
 米中の貿易摩擦は長期化の様相を呈している。ある程度の妥協に至るまでには時間がかかろう。なぜなら問題の本質は米国の単なる貿易赤字ではなく、共産党独裁という国家体制から生じた覇権主義的な体質に対する米国の違和感にほかならないからだ。
 中国側としても国家体制そのものを問題視されていることは承知の上であり、そうであるならば安易に妥協の道は取れない。結果として米中交渉が長引けば長引くほど、世界経済が悪化の方向に進むのは避けられまい。
 国際通貨基金(IMF)がまとめた試算では、米中摩擦により追加関税が全面的に拡大した場合、2国間の貿易規模は最悪で7割減少する。企業の調達網の世界的な拡大によって影響は以前にも増して大きく、世界的な金融環境も悪化しかねないという。
 こうした中で米紙ウォールストリート・ジャーナルは日本の消費税について「安倍晋三首相は増税によって、景気を悪化させようと決心しているように見える」と痛烈に批判した。景気後退期の増税に対する世界の標準的な見方だろう。
 消費税の税制としての長所は少なくない。増え続ける社会保障費を現役世代だけでなく、消費税の形で社会全体で負担するのはもっともな理由がある。インボイス(適格請求書)の導入によって脱税がしにくくなるのも特長だ。
 ただし、最大の欠陥は消費を減退させ、景気に与える悪影響が深刻なことだ。それだけに増税は慎重を期してタイミングを計らなければならない。世界経済の減速傾向が鮮明になってきた時期に合わせたような増税は、各国からの批判を招こう。
 20日には1~3月期の実質国内総生産(GDP)の速報値が発表される。すでに民間企業の設備投資には陰りが見え始め、民間シンクタンクは多くがマイナスの成長予測をしている。こうした状況下で増税は妥当かどうか、政府は慎重に判断してもらいたい。