日本の防災対策は長年、行政が主導してきたが、国は本年度から住民主体の防災対策を本格化させ、住民が自らの判断で避難し、行政は住民が的確な行動を取れるよう支援する体制の実現を目指す。
 通信や観測技術の発達により、気象情報や避難情報は進化した。2005年に避難準備情報と土砂災害警戒情報が導入され、13年には数十年に1度の災害の危険性が高まっている場合に出す特別警報がスタート。住民が避難を判断する材料は増えている。
 ところが、昨年7月の西日本豪雨では、避難の遅れで14府県で245人が犠牲となった。水害としては平成で最悪の人的被害を記録した。このため政府の中央防災会議の作業部会は昨年末、豪雨時の避難の在り方を検討した。
 国の調査によると、西日本豪雨で被災した自治体の多くが「避難勧告が避難行動につながらなかった」と回答。作業部会は突発的な豪雨に対する行政主体の対策の限界を指摘し、住民主体への転換を求める報告書を国に提出した。
 報告書の末尾には国民へのメッセージを添えた。「行政は万能ではありません。皆さんの命を行政に委ねないでください」「避難するかしないか、最後は『あなた』の判断です。皆さんの命は皆さん自身で守ってください」
 作業部会は防災情報の分かりにくさを、避難の阻害要因の一つに挙げた。大雨などの際、気象庁は気象警報、国土交通省は河川水位情報、市町村は避難情報を即時に発信するが、各情報の意味が住民に十分理解されていない実態に加え、避難勧告などの重要な情報が埋没する懸念がある。
 報告書は避難のタイミングの明確化も提言した。国は切迫度に応じて5段階に区分した警戒レベルの導入を決め、3月末に自治体が発令する際のガイドラインを改定。レベル1は心構え、2は避難行動の確認、3は高齢者らの避難開始と住民の避難準備を意味する。4は避難を、5は命を守る最善の行動を求める。
 ただし、避難を判断するのはあくまでも住民自身だ。防災情報と避難行動の溝を埋めるには、住民の防災意識の向上が欠かせない。警戒レベルを含めた防災情報を正しく理解し、避難を判断できるようなサポートや教育のほか、介助が必要な高齢者らの避難対策、防災情報の精度向上といった取り組みで、行政の責務は一層重みが増す。
 東北に暮らす私たちは自然が多くの恵みを与える一方、時に東日本大震災のように荒ぶることを知っている。西日本豪雨の教訓を生かすため、水害が起きやすい時季を前にいま一度、家や学校、職場で避難場所や経路、早期避難の心構えを確認してほしい。
 相手は人が制御できない大自然だ。逃げる習慣はもちろん、空振りに終わっても被害が無かったことをよしとするおおらかさも身に付けたい。