政府は未来投資会議で、希望する人が70歳まで働き続けられるよう企業に求める方針を示した。継続雇用など七つのメニューを設けることなどの努力義務を課す。

 安倍晋三首相は会議のあいさつで「人生100年時代を迎え、意欲ある高齢者に経験と知恵を発揮してもらいたい」と述べた。聞こえはいいが、厳しさを増す年金をはじめ、医療など社会保障費の伸びを抑えるのを狙っているのは明らかだ。

 企業にとって経営の自由度が狭まるなどの影響も予想される。働き手からすれば、60歳を超えてどう過ごすかは一人一人の選択に委ねられるべきであり、国が過度に立ち入ることは望まないだろう。

 社会保障問題と働き方をリンクさせ、高齢者をひとくくりにする捉え方には違和感を覚える。制度化に当たっては、個人の多様なライフスタイルに応じて、生きがいを感じられるような幅を持たせた中身を求めたい。

 2013年に施行された改正高年齢者雇用安定法は、定年制廃止と定年延長、継続雇用制度の導入のいずれかによって65歳までの雇用を義務付けた。企業の8割は継続雇用方式を選んでいる。

 今回の案は、70歳までの雇用についてこの3項目に加え、他の会社への再就職あっせん、フリーで働くための資金提供、起業支援、社会貢献活動への資金提供の4点を盛り込んだ。どれを選ぶかは労使で話し合い、強制力のない努力義務とした。

 意欲のある高齢者が興味のある分野に移れば、働き手不足の解消などに寄与しよう。こうした後押しを積極的に行うことはあっていい。

 他方で、前向きな企業を支援する傍ら、消極的なケースには厚生労働相が計画策定と履行を求める。将来的には、7項目のいずれかについて義務付けを検討している。選択の自由がそがれはしないか。

 新たな雇用確保方針を受け、年金制度についても仕組みの見直しが始まった。原則65歳としている受給開始年齢を守りつつ、希望に応じて70歳を超えてからでも受け取ることができるようにする。

 いまも60~70歳の間で選択が可能で、受け取りを遅らせた場合は年金額が割り増しされる。ただ、繰り下げ受給の利用者は全体の1%にとどまる。年齢の範囲を拡大したとして、どれほど活用されるか、はっきりしない。

 それでも見直そうとする背景には、社会保障費の増大を食い止めたいという思惑がある。就労拡大へと進むプロセスにおいて、受給開始年齢の引き上げが議論のテーブルに載る可能性も否定できない。

 70歳雇用に向けて求められる計画策定などが企業の負担となって活力を奪い、さらに若者の雇用とチャンスを奪う懸念もある。社会全般への影響は大きく、慎重に進めるべき事案と指摘しておきたい。