韓国人の元徴用工を巡って韓国最高裁が日本企業に賠償を命じた問題で、政府は日韓請求権協定に基づく仲裁委員会の開催を韓国に要請した。韓国側が応じる可能性は小さいとみられるが、政府は法的な対抗手段を淡々と冷静に進めてもらいたい。
 この問題を前向きに解決しようとする姿勢は、韓国政府には現在に至るも少しも見られない。むしろ問題をできるだけ先延ばしして、日本側がしびれを切らし、何らかの譲歩に出るのを辛抱強く待っているかのようだ。
 韓国側のそうした狙いは同訴訟の対応を検討している李洛淵首相の発言からもうかがえる。今月15日、李氏は韓国メディアとの討論会で「司法手続きが進行中の事案について政府が対策を出すのには限界がある」と語った。
 司法判断に政府が介入しないのは通常の法治国家であれば当然のことだが、韓国の司法は様相が異なる。この判決を出した最高裁の長官(大法院長)は、文在寅大統領が地裁の裁判長から極めて異例の大抜擢(ばってき)をした人物だ。
 左派的な思想傾向が文氏と近く、当初から元徴用工裁判への影響が懸念されており、判決が大統領府の意向を酌んだ結論になったとみられても仕方がない。裁判を巡るこうした背景を見ても、韓国政府自身が打開策を提示するのは当然であろう。
 昨年12月の韓国海軍艦艇による海上自衛隊P1哨戒機への火器管制レーダー照射事件では、韓国側は事実関係を真っ向から否定し、逆に日本非難を強めた。事態はあいまいなまま時間が徒過し、日韓関係の将来に禍根を残した。
 今回は原告側が日本企業の資産売却の手続きを進めているため、韓国政府の時間稼ぎにも限界がある。可能性は低いとみられるものの、韓国は仲裁委の開催に同意し、この問題の解決策を委ねるのが賢明な選択肢だろう。
 韓国経済は冷え込みが指摘され、文大統領の支持率は就任当初と比較して半減している。経済界には日韓関係を改善するべきだという意向が強い。保守系の新聞には政権批判の論調も出るなど、韓国内の世論の変化も見て取れる。
 フランス・パリで22~23日に開かれる経済協力開発機構(OECD)の閣僚理事会に合わせ、河野太郎外相は康京和外相と会談し、仲裁委の開催に応じるように働き掛けるという。ただ、この問題に不作為を続けてきた韓国側の態度はなお不透明だ。
 来月末、大阪で20カ国・地域(G20)首脳会議が開かれる。期間中、通常は各国首脳との会談が持たれるが、日韓首脳会談は徴用工問題に一定のめどが付かなければ、開かれない可能性が強い。
 この問題は長引くほど韓国にとっては解決に動きにくくなろう。柔軟な姿勢に早く転換し、日本との関係改善を図るのが国益にかなうはずだ。