蜜月とされる関係に配慮し、強気な態度を封印したのか。それとも時期尚早と見て決着の時期をずらしたということなのか。来日中のトランプ米大統領と安倍晋三首相による首脳会談が行われ、懸案の貿易問題について交渉を加速し、早期合意を目指すことで一致した。

 トランプ氏は会談冒頭で、「貿易不均衡を是正したい。8月に大きな発表ができる」と語った。妥結のタイミングを夏の参院選後とし、それまで待つ姿勢を見せた。

 米国にとって最大の課題である中国との通商摩擦の進展具合によっては、矛先を再び日本に向けてくる可能性がある。帰国すると国内向けに何を言い出すか分からないのが「トランプ流」でもある。気を緩めず、日本の立場を明確に主張し続けてほしい。

 これまでの交渉で、農産物と自動車など工業製品の関税分野を先行させることで一致。米国は牛肉などの関税引き下げを譲れない一線としている。環太平洋連携協定(TPP)の発効により、オーストラリアなどと比べて競争条件は厳しい。

 日本はTPP並みの水準を超えないことを伝える一方で、米国向け輸出車と部品の関税撤廃を求める。安全保障を理由に後ろ向きな米政権と工業分野で折り合い、農産物でも一致点を見つけるのは至難の業だが、保護主義をうたう相手と距離を置き、国益優先を貫いてもらいたい。

 米国内の農家に対し、米政権は金銭支援することを検討している。中国との制裁関税の応酬によって痛手を受ける農家を救う狙いがある。

 今月中旬、米政権は追加関税項目を発表、中国からのほぼ全ての輸入品に制裁関税がかかることとなった。

 中国も報復措置を6月1日に発動する。トランプ氏は、6月下旬に大阪で開かれる20カ国・地域(G20)首脳会合でトップ会談を行いたい意向という。

 6月決戦という大一番を控え、日本との事案を先送りした面も否めない。米中の行方次第で農家の顔色をうかがい、参院選後に農産物分野のハードルを上げてくるとしたら厄介であり、注意を要する。

 首脳会談では、北朝鮮による日本人拉致問題についても意見を交わした。安倍首相は問題解決のため、金正恩朝鮮労働党委員長と前提条件を付けずに会う意向を伝えた。

 トランプ氏は全面的に支持すると明言し、「拉致被害者の帰国を実現させたい」と協力する考えを示した。

 2回目の米朝首脳会談が決裂してから、朝鮮半島情勢は手詰まり状態にある。今月初めに発射された飛翔(ひしょう)体について、日米両政府は「短距離弾道ミサイル」と断定するなど、きな臭さも広がる。

 軍事行動をやめさせるには日米の協調関係を生かし、自制を迫るほかない。外交力の試される場面が続く。