米国のIT企業フェイスブック(FB)が計画する暗号資産(仮想通貨)「リブラ」について、主要国が規制の枠組みづくりに乗り出す。フランスで開かれた先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は「最高水準の規制を満たす必要がある」との認識で一致した。

 巨大なプラットフォーマーのFBによる金融参入は、国家の経済基盤である通貨の秩序を揺さぶりかねない。リブラ構想の公表から1カ月でG7が危機感を共有し、足並みをそろえた意義は大きい。各国は構想の課題を洗い出し、規制や対応策の検討を急ぐべきだろう。

 先進国にとどまらず、連携を新興国を含む世界規模に広げる必要もある。従来の国家の枠組みを超える「超国家通貨」に対し、幅広い連携で国際ルールを探ってほしい。

 リブラは、インターネット上で送金や支払いができるデジタル通貨の一種だ。法定通貨と違い、硬貨や紙幣といった実体はない。海外への送金は銀行などを仲介する必要がなく、スマートフォンがあれば安価で迅速に資金のやりとりができる。

 他の仮想通貨と違うのは、価格を安定させる仕組みを導入する点だ。リブラ協会という運営団体を設立し、リブラ発行で得た法定通貨などで預金や国債といった実在資産で価値を裏付けるという。「ビットコイン」は主に投機対象となったが、リブラは買い物の決済や送金などに活用される可能性が高い。

 FBと傘下企業が提供するサービスの利用者は全世界で27億人に上る。リブラが実現すれば、世界的な金融インフラとして急速に普及し、独自の通貨・経済圏を形成すると想定される。

 途上国などでは銀行口座を持たない人も少なくない。FB側はリブラによって、貧困層などの多くの人が金融サービスを利用できるようになると主張する。

 その利便性は認めるとしても、内在するリスクや懸念は看過できない。国境をまたいだ資金移動の簡素化で、テロ活動やマネーロンダリング(資金洗浄)などに悪用される恐れがある。G7各国は、中央銀行の金融政策が機能しなくなる危険性や、既存の金融システムが不安定となるリスクを指摘している。

 新通貨に対する各国の警戒感の根本には、FBへの不信感もある。FBでは過去に利用者の膨大な個人情報が何度も流出し、問題となった。資金のやりとりに関するデータ管理、サーバー攻撃などで資産が目減りした場合の利用者保護などにも厳しい目が向けられている。

 安心と便利を両立させるための制度をどのように構築するのか。「最高水準」の規制を敷くには課題が多岐にわたるが、政府は各国と緊密に連携しながら、早急に具体策を検討する必要がある。