いかに品質の高い農産物を集出荷していても、このままでは産地を担う組織として信頼を得ることはできまい。一人一人を大切にする協同組合の理念に立ち返って問題の経緯を調査し、責任の所在を明らかにする必要がある。

 庄内みどり農協(酒田市)の組合員がコメ販売代金の一部を不当に差し引かれたとして農協に差し引き分の支払いを求めた訴訟を巡り、山形県弁護士会は農協が原告の組合員らに人権侵害を繰り返しているとして、改善を求める勧告・要望書を提出した。

 弁護士会が訴訟案件で勧告などを行うのは珍しい。関係者はまず第一に、現状がいかに深刻な事態であるかをきちんと認識すべきだ。

 県弁護士会の調査によると、農協は組合員による提訴の動きが表面化した2016年、訴訟参加を予定する組合員の名簿を秘密裏に作成。理事や地域の有力者が名簿を基に戸別訪問し、提訴に加わらないように働き掛けた。

 提訴した組合員や原告に加わろうとする組合員への制裁や嫌がらせとみられる行為も確認されている。

 農業雑誌社の嘱託職員だった組合員は提訴後、農協が雑誌社に対し広告掲載を取りやめると圧力をかけたため、雑誌社の仕事を辞めざるを得なくなったほか、原告の組合員らが農協施設の会議室の使用を申請しても、農協は具体的な理由を示さずに拒否するなどしていた。

 組合員の個人情報を目的外に使って名簿を作り、恣意(しい)的に利用しただけでも非難されてしかるべきだが、そればかりか、組織的に組合員の提訴を阻もうと圧力を加え、「裁判を受ける権利」を侵害したことに弁解の余地はない。

 農協が組合員の同意を得ずに差し引いていたコメ代金の一部は、比較的高値で売れる商社などへの直接販売(直販)分と全農を通じた再委託販売分との差額の半分で、農協内では「直販メリット」と呼ばれている。

 庄内みどり農協は県内でもいち早く、より有利な直販に力を入れ、販売先を広げてきた。直販メリットが安定した販促活動を可能にし、直販の一層の拡大で農家所得の向上につながった面もあろう。

 しかし、農協が圧力を加えても原告は当初の4人から114人に増え、請求額は291万円から7100万円に上っている。農協が直販メリット徴収の正当性を訴訟で主張することと、組織の力で組合員の訴える権利を侵害することとは全く別の問題である。

 提訴妨害とみられる動きには、大口提携先である生活クラブ生協連合会(東京)が加担していた可能性も浮上している。

 組合員の権利回復を急ぐとともに、第三者委員会による調査で事実関係を明らかにし、問題の根底にある組織体質の改善に取り組むよう強く求めたい。