温室効果ガスの代表格である二酸化炭素(CO2)を回収し、燃料や建設資材として再利用する「カーボンリサイクル」への関心が高まっている。厄介者のCO2を資源として捉えた、いわば「逆転の発想」から生まれた考え方だ。

 政府は6月、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」の目標達成に向け、温室ガスの排出量を大幅に削減するための長期戦略を閣議決定した。温室ガスの排出を実質ゼロとする「脱炭素社会」を国として初めて掲げ、今世紀後半のできるだけ早期に実現することを目指す。その戦略の一つに、カーボンリサイクルが位置付けられた。

 長期戦略に合わせて経済産業省は「カーボンリサイクル技術ロードマップ」を打ち出した。2030年までと50年以降の二つのフェーズを設定し、CO2を利用できる燃料や製品ごとに、開発すべき技術とコスト目標を掲げた。

 この中で開発と実用化が有望視されているのは、分離・回収したCO2と水素を原料に都市ガスの主要成分であるメタンを作る技術、太陽エネルギーを用いてCO2と水からプラスチック原料を作る人工光合成の技術、藻にCO2を供給してバイオ燃料とする技術だという。

 政府が有識者懇談会の提言を踏まえて作成した長期戦略は、エネルギーの転換や技術革新に力点を置いた。だがCO2の排出が多い石炭火力発電の利用は堅持した。石炭火力発電を巡り懇談会の座長案は「長期的な全廃」を明記したが、産業界出身の委員の強い反発で「依存度を引き下げる」との表現に後退してしまった。脱炭素社会の実現に向けて障壁は高い。

 安倍晋三首相は今年1月のスイス東部ダボスでの世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で「緑の地球、青い海のため投資をするというとかつてはコストと認識された。今ではこれが成長の誘因。炭素をなくすこと、利益を得ることは車の両輪になれる」と演説した。この言葉が本気だったのだとしたら、長期戦略も座長案通りに閣議決定すべきだったのではないか。

 イギリスやカナダは石炭火力発電の廃絶を打ち出し、各国政府や企業に賛同を呼び掛けた。投資家が事業から資金を引き揚げる動きも目立つ。

 発電量の3割を占める日本では、東日本大震災以降も関西電力系の仙台パワーステーション(仙台市宮城野区)をはじめ、石炭火力発電所が続々稼働している。石炭火力は同じ量の発電をする際に出るCO2が天然ガスに比べて2倍以上多いとされ、「時代錯誤」との批判は少なくない。

 地球の大気中のCO2濃度は、産業革命前に比べ4割も増加した。次代にこのまま引き渡していいはずがない。コスト第一主義の産業界に、環境に寄与する技術革新を迫り、次代につないでいくことが政策立案者の責務だろう。