復興を完遂させるという目的においては、意義ある判断として受け止めたい。ただ、この1年余りの議論は何だったのかという疑問は残る。

 自民党は2020年度末で設置期限を迎える復興庁について、後継組織の検討を取りやめ、一転して存続させることを決めた。

 東京電力福島第1原発事故に伴う避難者の帰還を促進させることを柱に、21年4月以降も首相の直轄組織として継続する。引き続き専任閣僚を配置し、被災地の多様な課題に対応する機能を保つ。

 与党は存続理由として、東日本大震災で被災した自治体から現体制の維持を望む声が強かったことを挙げる。

 復興庁の継続に合わせて、政治に注文しておきたい。永田町にはびこる震災の風化を一掃することだ。

 「(震災が)まだ東北で良かった」「復興より大事なのは議員」。閣僚から被災地を軽んじる心ない発言が相次いだことは記憶に新しい。

 安倍晋三首相が事あるごとに「政府一丸となって復興を成し遂げるまで全力を尽くす」と強調するまでもない。復興は途上であることを全ての政治家が再認識すべきだ。

 後継組織の検討の俎上(そじょう)には重要課題が浮上していた。全国知事会が1年前に創設を求めた「防災省」構想だ。

 防災・減災の社会づくりから復旧・復興までを一貫して担う組織を指す。背景には昨年7月の西日本豪雨など大規模災害の頻発をはじめ、予想される南海トラフ巨大地震や首都直下型地震に備えた防災体制への危機感がある。

 こうした主張は与党内にもあった。昨年9月の自民党総裁選では石破茂元幹事長が首相との論戦で提唱。公明党の山口那津男代表も防災分野も担う組織形態に言及したが、政府の動きは鈍かった。首相が構想に否定的だったことと無縁ではあるまい。

 結局、「防災省」の本格検討はなく、今年春には与党主導で復興庁を存続させる流れが水面下で固まった。防災強化に関わる議論は、強制的に打ち切られる形になった。

 7月の参院選前に存続を示さなかったのは、争点化を避ける狙いだったという。予算の財源確保や人員体制見直しといった課題が浮き彫りになることを懸念したようだ。打算的な姿勢と言わざるを得ない。釈然としない思いを抱く有権者は多いのではないか。

 岩手、宮城、福島3県では8~11月、首長選や議員選が集中する。震災時の特例法で延期された選挙で、参院選で切り捨てられた争点を論じる好機だ。復興庁の存続期間や政策の方向性はもちろん、国の防災体制の不備についても主張を戦わせてほしい。

 復興庁の看板が残ることに甘んじ、政策立案がおざなりになっては本末転倒だ。「閣僚全員が復興相」という政権の方針は、一段と重みを増したと肝に銘じるべきだろう。