人工知能(AI)が幅広い分野で話題を集めている。人手や人材、後継者の不足に悩む東北にとっては、課題解決の有力な技術となる可能性を秘めている。

 AIはデジタル社会における「読み・書き・そろばん」の一つともいわれる。そんな基盤となる技術が普及する時代に向け、研究者育成にとどまらず、学生から社会人まで知識と理解を深める教育など態勢づくりが求められよう。

 AIやロボット、情報通信技術(ICT)を駆使した「スマート農業」。衛星利用測位システム(GPS)を備えた無人トラクターが農地を掘り起こし、出来秋には自動運転コンバインが農作物の成分を測定し収穫する。

 こうした実証事業が東北でも行われるようになった。

 政府が今年6月に閣議決定した「ものづくり白書」は、特に人手不足が深刻な中小の製造業で、AIなどデジタル技術の活用を促す。職人が長年培った技術、勘、経験を数値化してデータベースをつくり、技術の効率的な継承や成長に役立てる狙いだ。

 現状を見ると、中小企業は大手に比べ生産工程のデータ収集も遅れている。職人が引退すれば技術の断絶につながりかねず、AI活用の前提となるデータ収集の取り組みは急務といえよう。

 産業の現場でのAI活用に向け、大きな課題は人材の確保だ。

 同じ6月に政府が決めた「AI戦略2019」は人材育成を柱に据えた。専門知識を持ち、技術を活用できるAI人材を毎年25万人育成する目標を掲げる。

 政府の危機意識の反映でもあろう。少子高齢社会への対応で新技術は有効な選択肢となり得るのに、AI研究者は米国や中国に比べ層が薄いからだ。日本貿易振興機構によると、主要国のAI研究者数は米国が全体の半分近くを占め、1割強の中国が続き、日本は5%に満たない。研究と応用で世界の最前線から遅れている。

 国内の地方はさらにお寒い状況がある。AIのオンライン資格検定の受験者1万人弱を見ると、東京、神奈川、千葉、埼玉4県が7割超に上る一方、東北各県はわずか1桁、多くて2桁にとどまる。

 AIの応用を考えた場合、現場のどの業務に、どんな程度で導入するか判断するには経営レベルでも知識が欠かせない。幅広い層でAI教育を進める必要がある。

 AIの応用分野はロボットや自動運転にとどまらず、医療・介護、金融と広がりを見せる。知的業務の多くが代替可能という見方もある。雇用を奪うだけではないかという意見もある。

 社会全体で理解を深め、人の制御の下で、人の幸せに役立てる活用法の合意点を見いだしたい。社会を変えるような技術が出てきた機会を、地方はチャンスと捉えたい。