増え続ける児童虐待の相談や通告に対し、対応する児童相談所(児相)の体制が追いつかない。そんな実態が浮き彫りになった。

 全国の児相が2018年度に対応した児童虐待件数は、過去最多の15万9850件を記録した。前年度より2万6000件余り多く、統計を始めた1990年度から28年連続の増加だ。

 その要因は、児相と警察などの連携強化や住民の虐待に対する意識の高まりにより、通告自体が増えた影響が大きい。警察からの通告は全体のほぼ半数を占めている。

 通告が増えれば、それだけ児相の負担は増える。さらに通告を受けた後、48時間以内に子どもの安否を確認しなければならない。07年に導入された「48時間ルール」は、東京都目黒区で昨年3月に女児が虐待死した事件を受け、政府が昨年7月、緊急対策として徹底を求めた。

 だが、今年6月に札幌市で2歳女児が衰弱死した事件では、児相に虐待を疑う情報が寄せられたが、48時間ルールは守られていなかった。厚生労働省は今月、48時間以内に対応できなかった事例が昨年7月から11カ月間で、約1万2000件あったとする調査結果も虐待件数と併せて発表した。

 48時間ルールが徹底されない背景には、児相の人員不足がある。現場からは「人手が足りず負担が重すぎる」「職員が疲弊している」との悲鳴が上がる。児相で虐待対応に当たる児童福祉司の確保、育成は喫緊の課題だ。

 政府は22年度まで、児童福祉司を約2000人増員する方針だが、実現は見通せない。本年度は約1000人増の目標に対し、4月1日現在で各自治体の増員は予定を含め600人に満たない。

 数を増やすだけでなく、資質の向上も欠かせない。児童福祉司は高度な専門性と豊富な体験が必要とされる。だが国家資格ではなく、大学で心理学や教育学を学び、1年以上の実務経験がある人などを自治体が任用している。

 虐待事案に的確に対応できるよう資格見直しや専門職としての採用、待遇改善など児童福祉司の在り方についても検討が必要ではないか。

 先の通常国会では、児相の体制強化を盛り込んだ改正児童福祉法とともに、親による子どもへの体罰を禁じた改正児童虐待法が成立した。来年4月の施行を見据え、親の意識改革が求められよう。

 児相の職員増などは、いわば対症療法とも言える。「虐待しない」「させない」意識を親に根付かせる根本的な取り組みこそ重要となる。

 なぜ虐待が減らないのか。貧困問題など社会経済的な背景にメスを入れ、解決策を探ることも必要だろう。同時に、保護者を対象にした子育て支援プログラムや相談体制の充実など、虐待を生まないためのサポートが不可欠だ。