来年秋の大統領選を控え、支持基盤の農家に向けて成果を出したいトランプ米大統領と、市場開放を限定的にとどめたい日本政府が折り合い、「痛み分け」に近い形で決着する見通しとなった。

 フランスで行われた日米首脳会談において、両国の貿易交渉が大枠で合意した。最大の焦点だった農産物については、日本が米国産牛肉や豚肉にかけている関税を段階的に引き下げる。

 9月に最終決着し、年内にも新たな協定が結ばれた場合、11カ国が参加して昨年12月に発効した環太平洋連携協定(TPP)の水準まで下がる。米国はオーストラリアやカナダに比べて遜色のない条件を手にする。

 日本側にとっては、譲れない一線としてきたTPP並みを守ることで体面を保った格好だ。

 そうは言っても、牛肉などの税率は一気に下がる。米国産牛肉の関税は38.5%から下がり始め、十数年後には9%となる見込み。

 各国の攻勢にさらされる国内農家に対し、競争力を高めるための支援や、自由化の流れを逆手に取った和牛の輸出促進策などを講じてもらいたい。農業基盤を弱体化させない施策の発動が急がれる。

 このほかの合意内容をみると、日本が要求していた自動車本体の関税撤廃は見送られた。自動車部品をはじめ、工業製品については幅広い品目で関税を削減、撤廃する方向となった。

 畜産向けの飼料となる米国産トウモロコシの輸入を、前倒しして増やすことも盛り込まれた。

 農産物分野でさらに配慮を見せる一方で、日本側の恐れていた自動車の数量規制や追加関税、相手国の通貨安誘導を封じる「為替条項」などについては、引き続き回避できるよう交渉するとみられる。

 しかし、トランプ氏は多額の対日貿易赤字をいつも気にしているとされる。型破りな言動に世界が振り回されている点を考えると、土壇場でひっくり返される懸念も消えていない。

 米国は中国との激しい関税報復合戦のさなかにある。中国からのほぼ全ての輸入品に対象を広げれば、中国も関税率の上乗せを表明するといった具合で、行き着く先は見えていない。

 輸出先が先細る米国内の農業者の不満が高まり、米議会が一層の市場開放を求める行動に出れば、再び日本をターゲットにしてくる可能性もある。

 7月に行われた参院選の東北の6選挙区で、自民党は野党統一候補に対して「2勝4敗」に終わった。農産物交渉の行方を不安視する有権者が、安易な妥協をしないようくぎを刺す意味合いもあった。

 政府与党は、この結果を忘れてはいまい。大枠合意に気を緩めることなく、万全な備えを取ってほしい。