福島県が浜通り地方の南相馬市と浪江町に整備を進めるロボット試験施設「福島ロボットテストフィールド(RTF)」は、本館に相当する南相馬サイトの研究棟が30日に全面開所する。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の被災地を逆手に取り、陸海空のロボットの「世界に類を見ない一大研究開発拠点を目指す」というRTFは、まさに「創造的復興」の取り組みと言える。

 南相馬サイト(50ヘクタール)は震災に伴う津波の浸水地域、浪江サイト(5ヘクタール)は福島第1原発事故後に東北電力が建設を断念した浪江・小高原発の旧予定地に立地する。市と町が県に土地を無償貸与し、県は国の財政支援を受けて2017年度から試験施設の建設に取り組む。

 第1弾として18年7月、南相馬-浪江間の約13キロを長距離飛行する小型無人機「ドローン」の運航管理を担う通信塔が南相馬サイトに開所。同サイトには19年2月、インフラ点検や災害対応のロボット開発を想定した地上6階の試験用プラントも完成した。

 同サイトでは今月30日に救助活動や復旧作業で活躍するロボットを操縦訓練できる瓦礫(がれき)・土砂崩落フィールド、10月1日にはドローンの滑走路付属格納庫も稼働。20年春を予定するRTF全体のオープンを前に、建設する全21施設中11施設が利用可能になる。

 RTFに研究室を構える企業・団体の募集も好調だ。県や指定管理者の公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構によると、当初用意した13室を22室に増やすべく県条例の改正手続きを現在進めている。

 3日にあった第1次の入居式で「空飛ぶクルマ」を開発するベンチャー企業は、航空法の制限を受けずに自由に飛行試験できる緩衝ネット付き飛行場がRTFに備わることなどを挙げ「国内で最も開発環境が整っている」と入居募集に応じた理由を語った。

 創造的復興は1995年の阪神大震災で提唱され、東日本大震災では発生から1カ月後に政府が閣議決定に盛り込んだ。15年に仙台市で開催された国連防災世界会議で採択された防災指針「仙台防災枠組」も「ビルド・アップ・ベター(より良い復興)」の原則を採用している。

 ただ理念先行型で最先端の科学技術が関係する試みだけに地元には一部、RTFの整備効果を疑問視する声があるのも事実。開発・製品化に成功してRTFを巣立つ事業者がいち早く現れ、それに憧れて新たな事業者が入居を志す好循環が確立されるといい。

 そうした折、南相馬サイトで建設中の水上・水中ロボット試験用大水槽に傾きやひび割れが相次ぎ、工期が延期されるトラブルが発覚した。県はまずは原因究明と補修工事を急ぎ、施工トラブルが創造的復興に水を差す結果とならないよう取り組むべきだ。