日本の排他的経済水域(EEZ)内にある日本海の好漁場大和堆(やまとたい)付近で、水産庁の漁業取締船と北朝鮮漁船が衝突した。違法操業をしていたとみられる漁船は、退去するように取締船から警告を受けた際、急接近して意図的に衝突した疑いも残る。

 詳細は不明だが、極めて悪質で危険な行為であり、容認できるものではない。政府が北朝鮮に厳重に抗議したのは当然だ。日本の漁業者の安全を守るためにも、これまで以上に現場海域での監視を強化しなければならない。

 イカやエビの有数の漁場である大和堆とその北側の海域では、北朝鮮や中国船とみられる外国漁船の違法操業が恒常化している。

 本年版の「水産白書」によると、海上保安庁と水産庁は2018年、この周辺で延べ5315件に上る退去警告を行い、このうち2058件で放水による警告を実施して漁船を退去させた。

 北朝鮮の漁船が密漁を繰り返すのは、国内経済の疲弊を受けて、沿岸の漁業権を次々に中国に売り渡し始めたためだ。17年12月、国連安全保障理事会は経済制裁強化の一環として漁業権の売買を禁止したが、今も売買は続いているとみられる。

 このため、北朝鮮の沿岸で操業する中国の漁船に追いやられる形で、北朝鮮の船は沖合に出漁せざるを得なくなったという。

 経済制裁が強まり、外貨稼ぎのため金正恩朝鮮労働党委員長の号令下、漁業が督励されている事情もある。老朽化した木造船で無理に日本海に出て難破し、漂着するケースがこの数年で急増したのはその証しだろう。

 ロシアの対応が一変した影響も見逃せない。密漁を黙認してきたロシアは、国境警備の当局者が北朝鮮漁船から銃撃された事件を機に、先月から摘発に乗り出した。これを避けて、取り締まりが緩やかな日本のEEZ内での密漁が急増したとみられる。

 外国船に漁場を奪われている日本の漁業者の不安の声に政府は耳を傾けて断固とした対応を取ってもらいたい。8月には北朝鮮船とみられる高速艇が海上保安庁の巡視船を小銃で威嚇する事件が発生しており、漁業者の不安は高まっている。

 死傷事件に巻き込まれかねない外国船とのトラブルを恐れ、漁業者は外国船が横行する漁場には近づかないようにしている。いわば泣き寝入りしている状況だ。違法な外国船による乱獲を考え合わせると、日本海の漁業は危機的な状況に直面しており、損害は計り知れない。

 水産庁はこれまで漁業取締本部を設置したほか、取締船を増やすなどして外国漁船の違法操業に厳正に対応する計画を明らかにしている。漁業者の安全な操業の確保を第一に、違法な外国船を厳格に取り締まってもらいたい。