台風19号で浸水などによる住宅被害は8万6000棟を超えた。住宅は生活再建の基盤だ。修理や再建の見通しが立たなければ、暮らしの立て直しもおぼつかない。古里を失う恐れすらある。

 国や自治体は住宅被害への支援拡充を急ぐ必要がある。とりわけ、国の公的支援から漏れた世帯への独自支援を見送った宮城県には支援策の検討を求めたい。

 国の公的な支援として、被災者生活再建支援法がある。適用されれば、最大300万円の支援金が支給されるが、対象は「全壊」と「大規模半壊」に限られる。

 家屋が浸水した場合の被害判定では、床上浸水でも床上1メートル未満は「半壊」、床下浸水は「一部損壊」とされ、支援金は原則支給されない。

 全国知事会は昨年から、支援金の支給対象を「半壊」まで拡大するよう国に要望しているが、実現を見ていない。同会の検証報告によると、半壊で約1000万円、一部損壊でも300万円程度の被害額になるという。

 半壊や一部損壊の住宅については、災害救助法に基づく応急修理費支援制度があるが、ふすまなど内装の修理には使えないなど制約が多い。

 こうした制度のはざまで苦しむ被災者は少なくない。災害の激甚化が想定される今、国は支援法の見直しはもちろん、災害法制全体の再整備を進めてほしい。

 台風19号に関しては、独自の支援策を実施する自治体が相次いでいる。

 岩手県は半壊世帯に最大20万円の支給などを決めた。県内では山田町が半壊に100万円、一部損壊は20万円を上限に補修費を支給するなど独自支援の動きが広がる。

 福島県は当初、独自支援を見送る方針だったが、県議会の要望を受けて半壊世帯への独自支援を設ける方向で検討に入った。

 長野県には6月に運用を始めた支援制度があり、長野市などと共同で半壊には最大50万円を支給。茨城県も2015年の関東・東北豪雨を機に設けた制度を適用し、半壊で最大25万円を支給する。

 多くの自治体は支援法に上乗せする形で独自の助成制度を設け、被災者に手を差し伸べている。内閣府のまとめによると、18年4月時点で少なくとも、33道府県が独自の住宅支援制度を持つ。

 一方、宮城県には住宅支援制度がない。東日本大震災の最大被災地として、本来、新たな支援制度を構築し、国や他の自治体をリードする役割を果たすべきではないか。

 震災では、公的な支援が不十分なため、石巻市などでは被災した住宅を修繕できていない「在宅被災者」が今でも多くいる。

 村井嘉浩知事は「創造的復興」として水産業復興特区や仙台空港民営化を誇る前に、住宅被害に苦しむ被災者にこそ目を向けてほしい。