東日本大震災は発生から10年目に入った。国の復興・創生期間(2016~20年度)は最終年度を迎える。政府が復興構想として提唱した「創造的復興」とは一体、何だったのか。その中身が問われなくてはならない。

 災害復興には大切な二つの復興がある。一つは、住宅や仕事を失った被災者が生活基盤を回復する被災者復興。もう一つは、被災地が再生する地域復興である。

 だが、創造的復興が地域にもたらしたのは、端的に言えば新たな制度の導入と公共工事による巨大インフラ整備だった。宮城県の村井嘉浩知事は水産業復興特区や仙台空港民営化の導入を誇っている。被災地では、かさ上げによる市街地が造られ、三陸沿岸道などの整備が進んだ。

 公共インフラを象徴するのが、沿岸部に延びた防潮堤だろう。多くの地域で、地域の特性が考慮されることなく、一律の基準で巨大な防潮堤が築かれた。一方で、後背地は利用されず、更地のまま放置された地区が点在する。

 ハードの整備が先行する陰で、肝心の被災者一人一人の生活には創造的復興は見えない。まち再生の地域づくりについても、将来像やビジョンに住民の意思や思いが反映される機会は少なかった。

 なぜ、そうなってしまったのか。行政側の復興予算ありきの硬直的な姿勢などさまざまな要因があろう。

 ただ、災害が発生した後では、復興に住民や利害関係者らの意見を適切に反映させ、皆が納得する事業をまとめるのは時間的に難しい。住民は被災後の自らの暮らしに精いっぱいで、地域再生を考える余裕がない。

 では被災後ではなく、被災前の平時に復興を見据えた地域づくりを考え、準備や実践を進めるたらどうか。そんな「事前復興」が今、注目されている。

 国は18年7月にガイドラインを公表し、事前復興計画の策定を促した。先んじた自治体は、既に高台に街を移したり、災害後の復興計画を策定したりしている。

 南海トラフ巨大地震で将来被災が想定される和歌山県は18年、「復興計画事前策定の手引き」を策定した。東日本大震災の復興を批判的に総括した上で、地域の特性を生かしつつ、住民を主体とした復興を掲げる。

 そもそも、住民の意向を復興計画へ反映させることが制度として保障されていない点は問題だ。復興の主体はあくまで被災者であり、その地に住む住民のはずである。

 住民が自分たちの住む地域を知り、想定される被害を理解し、今後の地域のあるべき姿を思い描きながら災害に備える。そうした事前復興の手法は災害が多発する今、重要性を増すに違いない。

 事前復興計画の策定を法的に位置付け、予算措置を講じることが必要ではないか。