冷静さを失わず、必要な対策を粘り強く、着実に実施する必要がある。

 世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルスによる感染拡大について「パンデミック(世界的大流行)と見なせる」と表明した。

 中国・武漢市の海鮮市場が発生源とみられる感染症が全世界に広がり、拡大に歯止めがかからない。感染国・地域は約120に上り、感染者数は約13万人に迫る。死者は4000人を超えた。

 国境を越えて行き交う人々が増え、感染が広まるスピードはかつてと比較にならないほど速い。世界がつながり、経済に及ぼす波紋も大きい。株価が大幅下落した世界経済をはじめ、人の移動、スポーツ関連、催しなど多くの分野で多大な影響が出ている。

 一国での対策や対応には限界がある。各国や国際機関が今以上に連携、協調して対処しなくてはならない。

 パンデミックは制御できない大規模な流行を意味する。WHOはインフルエンザにのみ使用してきた表現だ。新型コロナウイルスで使ったのは、各国に事態の深刻さを認識してもらい、対策強化を促す狙いがあるのだろう。

 WHOのテドロス事務局長は「感染の広がりと重大さ、そして対策の不足に強い懸念を持つ」と説明した。一方で「パンデミックは制御できる」として感染拡大を放置しないよう強調している。

 WHOによるパンデミックの表明は、2009年の新型インフルエンザの感染拡大以来11年ぶりだ。この際のパンデミック宣言は世界に混乱をもたらし批判された。そんな経験から、今回の対応は後手に回ったとの指摘がある。

 WHOは1月30日に最高レベルの警戒を呼び掛ける「緊急事態宣言」を出したが、この時も中国政府への配慮から宣言が遅れたとされる。初期段階での過小評価が感染拡大につながった面は否定できない。今後、一連の対応を巡る検証も求められよう。

 トランプ米大統領はWHOの表明後、英国を除く欧州からの入国を30日間停止すると発表した。水際対策が重要とはいえ、一方的な行動は欧州連合(EU)から強い非難を浴びた。国家間の摩擦を生じかねず、国相互の理解と協調が欠かせない。

 大規模な感染は、アフリカ諸国など医療態勢が十分整っていない地域にも拡大する懸念がある。WHOを中心に知見とデータを世界から集め、医師や研究者らが協力し特効薬やワクチンの開発に全力を挙げてほしい。

 WHOの表明で、日本の対応が変更を迫られるわけではない。感染者を把握し、さらなる拡大を阻止し、重症者が亡くならないよう治療を尽くす。社会的な混乱には適切に対処する。感染終息が見通せない中で、長期化も視野に入れながら地道な取り組みを続けるほかあるまい。