収入以上のお金をつぎ込み、負けが続いて借金を重ねる。こんな行為を繰り返すうちに家族や近しい人との関係が破綻し、自殺に追い込まれることもある。

 ギャンブル依存症になると、楽しみながら賭けをするのではなく、やめた方がいいと分かっていながら制御できなくなる。特定の刺激に脳が過剰に反応してしまう状態で、世界保健機関(WHO)は病気として認定している。

 2017年度に政府が実施した調査では、依存症経験が疑われる人は国内で320万人に上ると推計される。専門家によると、多少勝っても興奮せず、負けても取り返せると考え、高額な借金が平気でできるようになるのが特徴的な症状だという。

 政府は昨年4月、カジノを含む統合型リゾート(IR)整備に向け、ギャンブル等依存症対策推進基本計画を閣議決定した。刑法で禁じている賭博の場となるカジノを合法化しながら、依存症対策を講じるというのは、そもそも本末転倒ではないだろうか。

 消費者庁のホームページでは依存症の人に向け「ギャンブル等をしない生活を続けるよう工夫し、ギャンブル等依存症からの『回復』、そして『再発防止』へとつなげていきましょう」と呼び掛ける。「成長戦略の柱」と称し、依存症の原因として懸念されるカジノを解禁するというのに、なんとも空々しい。

 ギャンブル依存症の対策として、カジノの延べ床面積はIR全体の3%以下にする方針だ。日本人客の入場は週3回、月10回に制限するほか、マイナンバーカードの提示を求め、入場料6000円を徴収する。ただ、どこまで実効性を高められるか疑問視する声が上がっている。

 米国の文化人類学者ナターシャ・ダウ・シュール氏の著書「デザインされたギャンブル依存症」によると、カジノのマシンは収益の最大化を図るべく設計されている。大当たりのニアミスを意図的に高い確率で出現させ、「今度こそ」と思い込ませてプレイを続行させる仕掛けにもなっているという。「適度に楽しむこと」はさせず、自動的にのめり込ませるシステムになっているというわけだ。

 河北新報社など加盟の日本世論調査会が昨年12月7、8両日に実施した全国面接世論調査で、IRの国内整備に反対の人は64%と、賛成の32%を大きく上回った。反対理由は「ギャンブル依存症の人が増える」(64%)が最も多く、「治安悪化や渋滞など生活悪化につながる」(48%)と続いた。

 世論調査後、IRを巡る汚職事件が起きた。内閣府副大臣だった衆院議員秋元司被告(自民党を離党)が収賄罪で起訴されており、IR政策自体に疑義が生じている。政府は世論をまともに受け止めた方がいい。国民は利権のための材料ではない。