世界の主要な金融機関が加盟する国際金融協会(IIF)は、2020年の世界の実質経済成長率がマイナスに陥るとの予測を発表した。金融危機後の09年以来、11年ぶりの事態となる。新型コロナウイルスの感染拡大で、日米欧はそろってマイナス成長に転落する見込みだ。

 各国が次々に国境封鎖や外出制限の措置に踏み切り、運輸・宿泊・小売・飲食業界などが既に大きな打撃を受けている。製造や農林水産業にも影響が出始めた。経済活動は急速に停滞、縮小している。

 株価は記録的な振れ幅で乱高下を繰り返し、金融市場は先行きの見えない不安心理に覆われているようだ。世界経済が深刻な危機に落ち込むのを防ごうと、日米欧や中国など主要国・地域の中央銀行は金融緩和に動いた。

 原因がパンデミック(世界的大流行)である以上、各国ばらばらの取り組みでは十分な効果は期待できまい。感染拡大防止と金融・財政政策を両輪に、各国が協調して対処できるかどうかが経済危機回避の鍵を握るだろう。

 覇権争いを続ける米国と中国は、感染拡大の責任を巡り互いに非難合戦を繰り広げている。トランプ米大統領らは新型コロナを「中国ウイルス」と呼ぶ始末だ。

 感染症発生と拡大の原因や経緯を検証することは大事だが、今はそのときではなかろう。混乱のさなかの経済大国同士の感情的なつばぜり合いは、パニック的な市場の不安を増幅しかねない。

 まずは「見えない敵」に対し新興国も含め各国が歩調を合わせ、あらゆる手段で立ち向かう姿勢をアピールすることだ。トランプ氏の登場を機に一国主義的価値観による分断の試練にさらされた世界に、今こそ協調が求められる。

 中国も巻き込んで治療法やワクチン開発を協力して進め、同時に実効性のある経済対策も連携して実行すべきだ。今後もあり得る感染症まん延のリスクに、世界が対抗する実践例にしたい。

 世界保健機関(WHO)などのまとめでは、世界の感染者数の増加ペースは上昇が続く。対照的に震源地の中国は2月上中旬をピークに減少傾向をたどる。一定期間がたてば中国以外も終息へ向かい、経済も回復することが期待されている。

 この間、大きな傷を負った分野には手当てが必要だ。日本政府も緊急経済対策を検討している。優先されるべきは企業の資金繰り支援など事業継続と雇用維持であろう。

 日本政府の専門家会議は警戒を続けており、現段階で最も重視すべきは感染の拡大防止であることは言うまでもない。人やモノの移動を制限することになり、景気の刺激策は感染症対策と矛盾する恐れがある。東京五輪も延期される。景気浮揚のための政策はタイミングを見極める必要があろう。