新型コロナウイルスの感染拡大による世界経済と国内経済の減速が鮮明に数字に表れ始めている。政府が26日に発表した3月の月例経済報告は、国内景気の判断を3カ月ぶりに引き下げた。景気の冷え込みを政府がようやく公式に認めたことになる。

 「緩やかに回復」という希望的な文言が残った2月の経済報告とは一転して、今月の経済報告からは「回復」の文字が消えた。その上で「足元で大幅に下押しされており厳しい状況にある」として、景気への危機感を強くにじませる内容となった。

 一般の感覚からすれば、こうした判断は遅すぎると言えるのではないか。いま最も必要なのは、現在の日本経済が緊急事態に陥っているという正しい現状認識である。あらゆる政策を総動員し、政府は深刻化するコロナ不況を乗り切る必要がある。

 昨年10月の消費税増税は予想通りに消費の大幅な減退を招き、そこへコロナ禍が襲いかかった。東京五輪・パラリンピックの延期も決まり、五輪開催に伴う内需の拡大は当分は当てにできない。新型コロナの感染拡大が長期化する恐れも否定できない。

 中小企業の景況感に注目したい。信金中央金庫がまとめた1~3月期の全国の景気動向調査では、景況感を示す業況判断指数(DI)がマイナス19.3に落ち込んだ。前期からの悪化幅は、リーマン・ショック時の2009年1~3月期以来だという。

 政府与党が各業界から緊急経済対策のとりまとめに向けて意見を聞いた会合では、さまざまな要望が出された。厳しい実情を訴える現場からの切実な声を受け止め、きめ細かな対策の実現に政府は全力を挙げてもらいたい。

 現在の状況は緊急事態であり、こうした場合に経済政策が戦力の逐次投入であっては効果が薄い。国の財政を預かる財務省からは消極的な声も出ようが、需要を確実に支える思い切った財政出動は不可避だろう。

 20カ国・地域(G20)首脳が緊急テレビ会議を開き、この事態に対処するため5兆ドル超(約550兆円)を世界経済に投入すると明言した意味は大きい。主要国が協調して回復を目指すとなれば、日本も財政出動がしやすい。

 安倍内閣の経済政策アベノミクスの最大の目的は、雇用環境の安定だった。大規模な金融緩和や財政政策によって、事実上の完全雇用の状態にまで達した。コロナ不況の長期化で企業倒産や業績悪化による失業増を招くような事態は避けたい。

 リーマンショック時には金融緩和と財政出動がうまくかみ合わず、雇用の安定を損ねた。結果として自殺者の増加を招いた失策を忘れてはならないだろう。教訓を生かして生活困窮者や中小企業への支援を急ぎ、この経済危機を乗り切りたい。