車の通行を妨害しようと幅寄せや割り込みをする。前の車に異常に接近する。そうした「あおり運転」の撲滅につながるよう期待したい。

 政府は、あおり運転の厳罰化を盛り込んだ道交法改正案を国会に提出した。今国会での成立を目指し、今年夏までに施行する方針だ。

 現行の道交法には、あおり運転について明確な定義がない。このため警察は、道交法の車間距離保持義務違反や刑法の暴行罪などを適用し、取り締まっている。危険な運転により死傷事故を起こした場合は、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)を適用してきた。

 あおり運転は人命を奪いかねない危険があるにもかかわらず、そのものを取り締まる規定がない上、これまで適用してきた法規では罰則が軽すぎるとの批判もあった。

 改正案では、通行を妨害する目的で、急ブレーキや車間距離を詰めるといった違反をする行為をあおり運転(妨害運転)と規定し、新たな罪と定めた。対象の違反には、急な車線変更や危険な追い越し、パッシング、幅寄せや蛇行運転、不必要なクラクションなど全部で10項目の行為を定めている。

 罰則は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金。高速道路でほかの車を停止させるなど「著しい交通の危険」を生じさせた場合は、より重い5年以下の懲役または100万円以下の罰金とした。行政処分も厳しくし、一度で免許取り消しとする。

 あおり運転を明確に犯罪と規定し、厳罰化を図ることで一定の抑止効果は期待できるだろう。ただ、それは根絶に向けた第一歩にすぎない。

 警察がさまざまな法令を駆使して取り締まったうち、道交法違反(車間距離不保持)の摘発は2019年、全国で1万5065件だった。警察庁が摘発の強化を指示した前年より15.7%多く、この3年間で2.1倍に増えた。

 取り締まりを強化するとともに、運転免許の取得・更新時の講習などを通じ、ドライバーの意識を高めるなど地道な取り組みを進める必要があるだろう。

 また、法務省の法制審議会が2月、危険運転の要件拡大を答申。政府は自動車運転処罰法の改正案も国会に提出した。自分の車を他人の車の前に停止し、他の車を停止させるなどする行為を危険運転の定義に追加する。

 これまでは、加害者側の車が重大事故につながる速度で走行していることが要件だった。改正案が成立すれば、車の速度が出ていなくても「割り込み停車」は危険運転として処罰する。

 ただ、法改正は重い処分を伴うだけに、犯罪の立証が課題となる。ドライブレコーダーの映像など客観的な証拠がない場合、どうするのか。適正に運用されるよう、国会で丁寧に審議してほしい。