非正規雇用労働者と正社員の不合理な待遇格差をなくす「同一労働同一賃金」が、きのう始まった。改革の趣旨にのっとり、企業には公平で分かりやすい賃金制度を作ることを求めたい。

 同一労働同一賃金は政府の進める働き方改革の柱の一つ。雇用形態が正規か非正規かにかかわらず、同じ仕事をすれば同じ賃金を支払うという考え方だ。

 仕事の内容や責任が同じなら同じ待遇にする「均等待遇」、仕事や責任が違っても不合理な格差を認めずバランスを取る「均衡待遇」の規定がある。労働者から格差の理由の説明を求められたら、企業は応じる義務がある。

 パートやアルバイト、契約社員などの短時間勤務や有期契約の労働者と派遣社員が対象となる。まずは大企業と派遣会社に適用され、中小企業は来年4月からの開始だ。

 背景には非正規労働者の増加がある。非正規は正社員の6割程度の賃金水準にあり、雇用者の約4割を占めるまでになった。主婦のパートだけではない。世帯主が非正規という例も増え、65歳以上でも非正規で働き続けるのが普通になっている。非正規の処遇を改善し、経済の底上げを図るのが狙いだ。

 ただ、あらかじめ職務を明確にして採用、処遇するのが一般的な欧米と違い、新卒一括採用後に配置換えを経て能力や経験を評価され昇給していく日本型雇用では労働の対価をどう査定するのかは難しい。賃金の違いは不合理でなければ適法とされるため、制度の運用は企業のさじ加減に左右される面が強い。

 新制度は企業に人件費の増加をもたらす。このため、非正規労働者の処遇改善のために正社員の基本給や賞与を減らしたり、非正規にこれまでなかった賞与を支給するためにその基本給を減らしたりする本末転倒の事態が懸念されている。非正規の雇い止めも起こりかねない。

 共同通信社が今年3月に主要企業110社を対象に行った調査によると、同一労働同一賃金の導入で72%に当たる79社が非正規労働者の待遇改善につながると回答している。一方で15社は否定的で、中には「正規と非正規では求める能力など雇用の前提が異なる」と導入自体に疑問を投げ掛ける意見もあった。

 新型コロナウイルスの感染拡大もあり、新制度の実効性が上がるのかどうかは見通せない状況だ。政府は導入後の監視を怠らないようにしてもらいたい。

 企業も新制度をコストアップの重荷とだけ見るのではなく、賃金改革に前向きに取り組むべきだ。非正規労働者の待遇を改善することによって、そのやる気を引き出し生産性を向上させることが可能だろう。日本が人口減少に向かう中、貴重な労働力を生かし業績改善につなげる努力が求められる。