他人のたばこの煙を吸い込む受動喫煙対策を強化する改正健康増進法が今月、全面施行された。飲食店や職場、ホテルのロビーなど不特定多数の人が利用する施設が原則禁煙となる。

 経過措置として既存の小規模飲食店での喫煙を認めるため「骨抜き」との批判もあるが、これを機に社会全体で受動喫煙の根絶へ向かいたい。

 改正法は昨年7月に一部施行された。既に学校や病院、保育園、行政機関などの敷地内が原則禁煙となっている。

 対象に加わるのは飲食店や職場の他、パチンコ店や劇場などのサービス業とタクシー、航空機、船、鉄道などの交通機関。飲食ができない喫煙専用室は設けることができる。

 急速に広まっている加熱たばこも対象だが、加熱式専用の喫煙室は飲食などをしながらの喫煙が可能で、紙巻きたばこよりも規制が緩い。

 最も受動喫煙しやすいとされるのが飲食店だ。喫煙室がなくても、出資金が5000万円以下で客席面積100平方メートル以下の小規模店は「喫煙可」などの標識を掲示すれば店内で喫煙できる。

 仙台市内の場合、飲食店1万3000店のうち、7割の約9000店が小規模店とみられるという。愛煙家の常連への配慮や喫煙室を設ける投資を嫌って、多くが喫煙可能になることが容易に想像できる。これでは健康被害の解消はおぼつかない。

 興味深いデータがある。国立がん研究センターなどのチームが2018年に行ったインターネット調査。対象者のうち喫煙者が87%を占める。飲食店の完全禁煙に賛成する人が78%で、バーの完全禁煙は65%だった。喫煙者が店での禁煙を必ずしも拒否していないことの表れと言えよう。

 東京都の条例は改正法より厳しい。従業員がいる店は店舗面積にかかわらず、専用室以外の喫煙を禁じる。改正法の「経過措置」もいずれなくなると考えた方がいい。飲食店は今、進んで禁煙に取り組むのが得策ではないか。

 全面施行を前に、話題となったのが議会の喫煙室だ。仙台市議会の議会棟には改正法の基準を満たした喫煙室があった。存続させる方針だったが、市民からの批判が相次いだため2月に一転、廃止することになった。宮城県議会も喫煙室の廃止を決めた。

 市民、県民の代表であり、率先して禁煙を先導するべき議会が存続を模索していたこと自体が驚きだ。廃止方針は当然だろう。「分煙が十分できている」として喫煙室の存続を決めた岩手県議会は再考するべきだ。

 受動喫煙防止に消極的だった政府が、重い腰を上げたのは「たばこのない五輪」を目指す東京五輪・パラリンピックに間に合わせるためだった。結果的に五輪は1年延期されたが、受動喫煙防止に向けた動きは止めてはならない。