東京五輪・パラリンピックは大会基本コンセプトの一つに「多様性と調和」を掲げる。多様性(ダイバーシティー)、包括性(インクルージョン)を合わせた「D&I」を「共有し、根付かせる」ことを目標とし、中には「多様な性」への対応も含まれる。

 日本スポーツ協会はこのほど、「体育・スポーツにおける多様な性のあり方ガイドライン」をまとめた。LGBTなどの性的少数者が、現場で差別や不平等な扱いを受けていることを示し、指導者らが知るべき、学ぶべき点を明らかにしている。

 性的少数者は、生物学的な性と性自認が一致しない人や多様な性的指向を持つ人(SOGI)、性染色体の型や性ホルモン量が標準的とされる男女と異なる人(DSDs)などさまざま。自認する性への適合手術を受けるトランスジェンダーもいる。

 スポーツ界では、2014年に五輪憲章で「性的指向」を明示し、差別が容認されないことを宣言。16年のリオデジャネイロ五輪では、50人以上のアスリートが同性愛などをカミングアウトした。

 それでも、「競争を伴う身体活動であるスポーツは、性的な差別や不平等が、他の分野より強固」と指摘される。

 日本では、人口の8~10%が該当するとも言われるが、多くのスポーツ指導者には、教え子に性的少数者がいるという認識が乏しく、「存在が隠れている」という。

 ガイドラインでは、指導者やチームメートによる「ゲイは気持ち悪い」など心ない言葉で傷ついた例など、現場でのさまざまな問題を明示。「当事者が必ずいる」という前提に立った指導やハード面の整備の必要性を訴えている。また、当事者から相談を受けた際の対処法なども交え、指導者らの意識変化を求めた。

 もう一つの大きなテーマは競技の参加資格の問題だ。スポーツは生物学的な特徴による公平性の観点から、馬術など一部を除き、男女別で競われている。

 これまで、男性ホルモンが基準値を超えるDSDs女性が参加資格を認められず、裁判で争われる例があった。「トランス女性」なども含め、国際オリンピック委員会(IOC)などは一定の基準を定め、条件緩和も進む。ただ、競技ごとに環境は異なり、個別のルール整備が求められる。

 性的少数者への差別を包括的に禁止する法律がない日本では、スポーツに限らず、さまざまな形での差別が指摘されている。ガイドラインを作成したワーキンググループ班長の来田享子中京大スポーツ科学部教授は「スポーツが変われば、社会が変わる影響力を持つ」と強調する。

 一人一人が「身近に当事者がいる」と意識し、「気付かずに誰かを差別していたかもしれない」と気付く。スポーツの現場をきっかけに、社会全体が少しは変わるはずだ。