新型コロナウイルスのさらなる感染拡大に備え、安倍晋三首相はきょうにも緊急事態宣言を発令する。

 改正特別措置法に基づき、住民に対しては外出自粛を要請し、イベント会場や娯楽施設などには使用制限を求めることができる。

 「宣言」の言葉からは、物々しい印象を受けるが、海外のように強制力を伴う「ロックダウン(都市封鎖)」とは根本から異なる。

 国民に強いメッセージを発し、心理的な影響を期待する側面を持つ。これまでと同様、慌てることなく落ち着いて行動してほしい。

 自分の周りでコロナ封じのために何ができるか、じっくり考える機会にもなる。政府は宣言の中身をかみ砕いて説明し、国民生活への影響をなるべく抑えるよう配慮しながら進めるべきだろう。

 宣言の対象は、東京都や大阪府など7都府県。東京では、今月に入ってから感染者の数が急激に増え、累計で1000人を超えた。

 感染経路が分からない患者の急増と、活動範囲の広い若者の感染によって拡大傾向に歯止めがかからない。

 とりわけ、医療提供体制は崩壊寸前とされる。受け入れ可能な病床数は限られ、東京都は入院の対象を重症者に絞ってベッド数にゆとりを持たせる一方、軽症や無症状の人をホテルや宿泊施設に泊める対策を取っている。

 宣言によって、都道府県知事は臨時の医療施設を確保するため、土地や建物を所有者の同意なしに使えるようになる。医薬品の売り渡しを業界に要請し、病院への運送もスピードアップされる。

 医療崩壊を阻止する意味において宣言の効果は小さくない。感染者数の増えつつある東北などの自治体も、準備を怠らないよう望みたい。

 このほか、学校の休校、老人福祉施設などの使用停止を要請できるとともに、劇場やスポーツイベントについても自粛や開催制限を働き掛けることが可能となる。

 これまでも外出の自粛要請とセットで続けられてきた。危機感をより前面に打ち出すことになるが、自粛の期間がさらに長期に及ぶことも予想される。

 日常の経済活動と、長引く休校による子どもの教育への影響が心配になる。この分野については、寸時を争う医療体制と切り離して考えたい。 専門家の意見を聞き、市町村の意向を尊重して臨機応変に対応すべきだろう。国民生活への影響を考慮の上、慎重に判断してもらいたい。

 運用次第では、国民の私権を制限する事態もあり得る。改正特措法では「国民の自由権利の制限は、必要最小限にとどめる」と定めている。

 あくまで住民と企業の理解を基本にしているのは、言うまでもない。協力要請に当たっては、丁寧な説明と合意の形成に努めてほしい。