生活保護の申請が急増している。新型コロナウイルスによる雇用情勢の悪化が影響した。感染症の収束は見通せず、解雇や雇い止めで生活苦に陥って申請がさらに増えるとの見方が強まっている。

 加藤勝信厚生労働相は国会で「生活に厳しい影響が出ている。相談、申請に的確に対応する態勢を構築していく」と答弁した。だが「的確な対応」とはいえない事例が報告されている。一部の福祉事務所が申請を拒否したり、施設への入所を条件付けたりしているという。

 保護の申請をさせず追い返すような対応を、日本弁護士連合会や支援団体などは以前から「水際作戦」と呼び、問題視してきた。生活保護は憲法25条の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」に基づく制度であり、申請を拒否するような対応は決して許されない。

 感染症の拡大、まん延を防ぐには小まめな手洗いやマスク着用といった、他者を思う一人一人の意識と行動が鍵を握る。感染防止策を進める上でも、図らずも生活苦に陥った人を社会全体で支える制度が十分機能することは必要不可欠だ。

 厚労省によると、4月の生活保護の申請は2万1486件で、前年同月比24.8%増となった。この伸び率は、比較可能な2013年4月以降で最大である。

 申請が急増する中で、支援団体からは水際作戦が横行しているという声が上がっている。申請拒否に加え、他の自治体に行くよう促したり、無料・低額宿泊所への入所を半ば強制したりする事例もあるという。

 無料・低額宿泊所の中には劣悪な環境にもかかわらず、高額な料金を請求する「貧困ビジネス」が存在する。相部屋も多いとされ、感染リスクが心配になろう。宿の確保に際してはアパートなどの活用も考えるべきだろう。

 水際作戦がやまない背景としては、福祉事務所の人手不足、関係機関との調整の手間を省く意識、専門知識を持つ職員の少なさ、施設整備のコストが挙げられる。

 新型コロナに関連する解雇や雇い止めは厚労省のまとめで、見込みも含め3.5万人を超える。関係者は今後、自殺者が増えることへの懸念も深めている。実際にリーマン・ショック後には自殺者が増えた。生活困窮者に対し、きめ細かい対応を迅速に講じなければならない局面にある。

 国は人的・財政的手当ても含め、自治体への支援と法制度の趣旨徹底を図るべきだ。保護の審査を一時的に簡素化することも検討課題となろう。自治体は困窮者の希望を丁寧に聞いて複数の選択肢を提示するなど、寄り添う姿勢が求められる。

 生活保護は「最後のセーフティーネット」と呼ばれる。生活といのちを守るよすがを強固なものにしたい。