インターネットを審理に生かす取り組みが法曹界で進んでいる。

 民事裁判に限定されるが、裁判所と弁護士事務所をネットでつなぎ、訴訟当事者らがウェブカメラを通じて争点整理などを行う「ウェブ会議」が増加している。

 民事裁判は裁判所、原告側、被告側の3者間の日程調整が難航し、審理が長期化する傾向がある。

 最高裁のまとめでは、民事裁判の平均審理期間は9カ月、証人尋問を行う場合は21カ月を要する。ウェブ会議なら裁判所に出向く手間がはぶけ、審理のスピードアップが図れる。新型コロナウイルスの感染防止にも有効だ。

 今年2月に知財高裁(東京)と東京、大阪、仙台など8地裁で始まり、順次運用が拡大されている。

 仙台地裁の実施件数は2月は18件。7月に127件と100件を超え、10月は278件に上った。コロナ禍がくしくも追い風となっている。

 遠隔地の当事者に配慮した電話会議システムもあるが「相手の表情を見ながら話せる。電話より協議がしやすい」とウェブ会議の方が好評だ。

 裁判所、訴訟の当事者と代理人のいずれにも利点はあるが、課題が多く残っている。

 ウェブ会議は、米マイクロソフト社のビデオ通話アプリ「チームズ」を利用。争点整理、準備書面の共有、和解協議などを非公開で行う弁論準備手続きで導入されている。電子化された資料を画面上で確認することもできる。

 アプリを入れたパソコンがあれば、どこでも利用できるが、機器の使い方に慣れていることが条件だ。

 日本の民事裁判では、弁護士を付けず訴えを起こす「本人訴訟」が認められている。原告がアプリを使う際に手間取った時、誰がどうサポートするのか。代理人は技術的に精通する必要があろう。

 訴訟当事者が習熟度により不利益を被ることがないよう、弁護士会によるバックアップが欠かせない。

 セキュリティー対策も極めて重要だ。電子化された記録の改ざんや漏えいは、当事者が被害を受けるにとどまらず、司法への信頼も失われる。

 民事裁判のIT化は、訴状や書面のオンライン提出やウェブ上での尋問の実施などを最終ゴールと想定している。

 政府は2025年までに、民事裁判の手続きを全面的にIT化することを目指している。

 ウェブ会議はその第1弾だ。今後、公開法廷の審理手続きも対象となろうが、当事者以外にどう公開するのか、肝心の部分が具体的になっていない。

 口頭弁論と判決の言い渡しは、公正さと国民の信頼を確保するため、公開すべきだと憲法は定める。IT化の利便性と審理の効率化にとらわれず、原則に準拠した制度設計でなければならない。