<未来の命、花々見守る>

 東松島市の野蒜海岸から約700メートル。被災した旧野蒜駅の東側に岩山がある。標高は30メートルほど。斜面を登ると小屋があり、程なくあずまやが見えてくる。

 悲しみに縁取られた東日本大震災の出来事から生まれたおとぎ話がある現場は、花の盛りを迎えようとしていた。

 大津波が野蒜地区を襲った日。ここに70人以上が身を寄せた。高齢者や子ども、けが人は小屋へ。男性はあずまやへ。備えてあった二つのストーブをつけ、水を分け合い、幾つもの命が救われた。

 岩山を所有する佐藤善文さん(85)は20年前、1人で整備を始めた。「いつか津波が来る」。やぶを払い、石を敷き、建材を担いだ。完成に3年を要した。

 助からなかった命もある。悔いを胸に佐藤さんは山を花で彩った。

 平時から多くの人に足を運んでもらいたい。ソメイヨシノ、シダレザクラ、ヤマザクラ。花々には未来の命を守る祈りが宿っている。