たばこと縁を切るにはどうしたらいいか。有力な方法として、病院のサポートを受けられる禁煙外来と禁煙支援がある。

 5月31日は世界禁煙デー。石巻赤十字病院(石巻市)で禁煙外来を担当する保健師の山内奈美さんと三浦孝子さん、看護師の川西泰美さんの3人に取り組みを聞いた。

■石巻赤十字病院 保健師・看護師に聞く
 「禁煙外来と禁煙支援」

-赤十字病院ではいつからどんな人を対象に禁煙外来を実施していますか。

 山内さん「2003年度に開設しました。19年度からはかかりつけの患者さんと、人間ドック・健康診断を受けた方のうち禁煙を希望する方が対象になります」

-どのような流れで進むのですか。

 川西さん「初回に肺機能検査でCOPD〔慢性閉塞(へいそく)性肺疾患〕かどうか、またその重症度を確認します。尿検査では、たばこから代謝されたニコチンが尿中にどれくらい含まれているかも確かめます。看護師が問診で禁煙の意志を確認し、次に医師による喫煙の害と禁煙の益についての講話を聴いていただきます。その後、医師の診察を受けて治療薬が決まり、禁煙宣言書にサインしていただき、いよいよ治療開始となります」

-どんな治療法がありますか。

 川西さん「禁煙補助薬として皮膚に貼るニコチンパッチと、ニコチンを含まないチャンピックスと呼ばれる飲み薬があります。補助薬を使いながら禁煙を継続するために吸いたくなったときの対処法として、代替行動について約束事を決めて実行していきます」

-禁煙外来はいつまで続きますか。

 川西さん「治療期間は3カ月間です。初回から2週後、4週後、8週後、12週後と計5回通院していただきます。2回目以降は看護師の問診と医師の診察を行います。喫煙の有無、薬の副作用の有無などを伺い、吸いたくなったときの対処法などを助言します。最後の5回目は卒煙といって、禁煙を達成した患者さんに医師から卒煙証書という免許証サイズの証明書が授与され、看護師みんなで称賛して励まします。財布などに携帯してもらい、吸いたくなったときに禁煙外来のことを思い出してもらえるよう声掛けしています」

-保健師として禁煙外来で注意している点は何ですか。

 山内さん「問診でじっくりお話を伺うことが大事だと考えています。例えば用法や用量は守られているか、副作用や一時的な離脱症状で生活に支障が出ていないか、吸わない状態を保てるように助言します。実は禁煙外来が終わって医療従事者のサポートがなくなってからが本当のスタートです。禁煙が継続できているか半年後、1年後に電話で確認して禁煙状況に合わせたフォローをしています」

-禁煙外来の実績を教えてください。

 三浦さん「19年度は25人が受診し、うち14人が禁煙に成功しました。2人は治療を継続中です」

-禁煙支援について教えてください。禁煙外来との違いは何ですか。

 山内さん「禁煙したい方を対象とする禁煙外来に対し、短時間禁煙支援は禁煙への関心の有無にかかわらず全ての喫煙者が対象です。短時間でも医療従事者からの禁煙の促しを繰り返すことが重要とされているので、健康診断の機会に禁煙を提案しています」

-禁煙支援の実績は。

 三浦さん「18年度は1388人に実施しました。このうち447人が、翌年の健康診断の問診票で禁煙していると回答されました。微力ではありますが、禁煙を決意していただくきっかけにはなったのではないかと思っています」

-取り組みを通して最も伝えたいことは。

 山内さん「たばこを吸わずに過ごす爽快感を味わってほしいです。3カ月保ってようやく吸わない状態といえます。禁煙をすると一時的に気分がイライラしたり物事に集中できなかったりするとおっしゃる方がよくおりますが、それは禁煙達成までの極めて自然な経過です。いずれやめたいのであれば、きっかけは早いに越したことはありません。代替行動を取りながら、吸いたい気持ちを段階的に減らして体を慣れさせていく。失敗することなど心配せずに、ぜひ気軽に禁煙外来を訪れてほしいです」

(石巻赤十字病院では新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐため、現在は禁煙外来の新規受診を受け付けていない。禁煙外来に取り組む石巻地域COPDネットワーク(ICON)の各医療機関への相談を呼び掛けている。)


■寄稿 石巻赤十字病院院長補佐・矢内勝氏「新型コロナ感染症とたばこ」

 コロナウイルスは、人では風邪の原因ウイルスの一種として知られています。もともと野生動物間のみで感染していたコロナウイルスの一つが中国の武漢で大きな突然変異を起こし、人から人に容易に感染するようになったのが、今回の新型コロナウイルスです。昨年11月に人での感染が確認された後わずかの期間で、新型コロナウイルス感染症は世界的大流行(パンデミック)となり、現在までに570万人以上が感染し、36万人以上が死亡しています。

 新型コロナウイルス感染症を発症すると、80%の人が軽症で済み、15%が重症化し、2%の人が亡くなっています。感染しても全く症状のない人が多いようですが、その数や割合は現時点では分かっていません。

 重症化のリスクとして、高齢、男性、肥満が挙げられます。その他に、COPD(たばこが原因の肺の生活習慣病)やぜんそくなどの呼吸器疾患、高血圧や心不全などの循環器疾患、糖尿病、がん、各種の免疫不全、人工透析などの基礎疾患があると重症になりやすいと報告されています。逆に、妊婦が重症化しやすいとか、胎児に影響があるという報告はほとんどありません。

 さらに、喫煙が新型コロナウイルス感染症の重症化と死亡の重大なリスクであることが報告されています。武漢での1100人の患者データを分析した研究で、喫煙者は、人工呼吸器の装着と死亡のリスクが非喫煙者の3倍以上になることが明らかにされました。日本呼吸器学会や世界保健機関(WHO)も新型コロナウイルス感染症対策として「禁煙すること」を強く推奨しています。

 コロナウイルスは、接触と飛沫(ひまつ)(せき、くしゃみ、唾液など)で感染します。ウイルスの付いた手で口元を触ることが最大の感染リスクです。吸う前に手洗いしなければ、たばこを吸うたびに感染のリスクが高まります。

 感染対策の要は「3密を避ける」ことです。密閉された空間で大勢がたばこを吸う喫煙室は「密閉」「密集」「密接」の典型です。マスクをせずに2メートル以内の距離で感染者と数分間過ごすことは濃厚接触に当たります。喫煙室の使用は感染のリスクと隣り合わせです。喫煙室の利用は控えましょう。

 宮城県では緊急事態宣言が解除されましたが、これから続く長い新型コロナウイルスとの闘いの中で「新しい生活様式」を継続することが求められています。その結果、自宅で家族と一緒に過ごす時間が増えた人も多いと思います。自宅で喫煙する機会が増えると家族の受動喫煙が増え、家族の健康を害することになります。家でたばこを吸わないよう心掛けましょう。

 新型コロナウイルス感染症が世界中で流行してから、生き方も経済も世の中の仕組みも「コロナ前」とは一変してしまいました。様々なストレスから、喫煙本数が増えたり再喫煙したりした人がいるかもしれません。しかし今こそが、新型コロナウイルス感染対策として、また、家族の健康のために、禁煙のチャンスといえます。新型たばこ(アイコスやプルームテックなど)にも、たばこと同量のニコチンのほか多くの有害物質が含まれます。新型たばこの受動喫煙による健康被害も報告されています。新型たばこと紙巻きたばこの健康被害は五十歩百歩です。

 たばこをやめられない最大の原因はニコチン依存症です。やめたくてもやめられない人は、禁煙外来を受診してください。禁断症状を抑える薬を使うことで禁煙しやすくなります。禁煙に成功した人の多くは、かえってストレスが減ったと驚きます。たばこに縛られた生活習慣から解放されるためです。

 5月31日は世界禁煙デー、ポストコロナ時代を身体も心も健康に生き抜くために、ぜひ禁煙について真剣に考えてみてください。

(やない・まさる/東北大医学部卒。東北大医学部第一内科、老年・呼吸器内科、マギール大学(カナダ)で呼吸器病学の研究と臨床を行う。2001年石巻赤十字病院呼吸内器科部長、14年同院副院長、20年から現職。)

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 石巻地域COPDネットワ-ク(ICON)は石巻地域の慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者を地域で支えるネットワークです。予約の要・不要や診療時間などは各医療機関にお問い合わせください。

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