東松島市宮戸島の郷土誌「未来に残したい島の記憶 宮戸島読本」が、東日本大震災の被災から10年を前にこのほど完成した。住民でつくる宮戸コミュニティ推進協議会が発刊し、島の豊かな自然や風土、歴史、信仰などを3年がかりでまとめた。編さん委員長を務めた同協議会の新沼慎二さん(58)は「7000年間続いてきた豊かな地域コミュニティーが継続する一助になってほしい」と願う。

 B5判、76ページ。530種の植物が自生し、ウミガメやスナメリが生息する豊かな自然をはじめ、月浜の小正月行事「えんずのわり」や大浜で年越しに振る舞われた「トフコ汁」など、四つの集落ごとに異なる風習を記す。

 日本最大級の里浜貝塚や、島出身で日本人で初めて世界一周した若宮丸漂流民の儀兵衛と多十郎の物語、太平洋戦争下に特攻船「震洋」の最後の基地が開設されたことなど、歴史のエピソードは多彩だ。

 米軍医だった故ジョージ・バトラー氏が1951年に撮影したかやぶきの民家や薪を集めて運ぶ子どもたちの姿が当時の生活を伝える。装丁を担当した関口雅代さん(東松島市)の挿絵もぬくもりを添える。

 郷土誌の編集は震災前に行われ、印刷を待つばかりの状態にあったが、津波で流失。住民の高台移転が完了した2017年12月に再編集への機運が高まり、住民や関係者ら計27人で検討委員会と編さん委員会を組織した。島の高齢者に聞き取りし、約70の参考文献から島に関する記述を収集した。制作費は住民の積立金と助成金を充てた。

 完成報告会が16日、同市宮戸市民センターであった。住民約20人が参加し、「立派な郷土誌ができて感激した」などの声が上がり、完成を喜び合った。

 宮戸島は震災後、島外に転出した人が多く、人口は486人とほぼ半減。高齢化が著しく、行事も存続できなくなりつつある。新沼さんは「今やらねばという使命感があった。小さな島だが調べるほどに話題が豊富で面白かった」と語る。

 読本は700部発行し、震災前に居住していた全261世帯と関係機関に配布。希望者には実費で譲る。連絡先は宮戸市民センター0225(86)2177。