コロナ禍、本に親しむ人が増えた。季節は読書の秋。石巻市の街中に見かけた本のある光景を紹介する。

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<階段の壁一面が本棚>

 寿町通りに面するパナックけいてい(石巻市中央2丁目)。古くからの電器屋さんだが、のぞくと、書店かと見間違いをしてしまう。2階に通じる階段の壁一面が本棚になっているためだ。

 「ざっと1000冊くらいあるかも。本棚は震災後、石巻との縁が深まった建築家に頼んだ。本は、たなか亜希夫君を介して譲り受けたのもある」

 社長の佐藤秀博さん(64)にとって仕事場であると同時に、落ち着く空間になっている。たなか亜希夫君とは、東日本大震災の被災地・石巻を舞台にした漫画「リバーエンド・カフェ」を執筆している漫画家のことで、石巻高時代の同期生だ。

 「本の雑誌」の背表紙がずらりと並ぶ。大学時代からの愛読書で「お宝」という。「ゲバゲバ90分」などテレビのお笑い番組を見て育った世代で、クレイジーキャッツや渥美清といった芸能に関する本も目立つ。歴史・戦記関連書も書棚を占める。「大将より参謀格に興味が向いてしまう。戦局を読んで作戦を練る。歴史の表舞台にあまり立たなかった人物に引かれる」

 学生時代に影響を受けた作家は筒井康隆。「日本のSFをいっぱい読んだ」という。椎名誠、村上春樹の本も好んだ。

 「大学が大阪だったから帰省する時は文庫本を3冊くらい持って各駅停車の列車に乗った。本が読める時間をつくった。幸せを感じた。が、ある時、ふと思った。社会人になったら、こんなぜいたくな時間は取れないんだなと」

 階段に立ち、書棚を眺めると、いつも本が身近にあった佐藤さんの人生が見えてくるようだった。ジャンルは広範囲に及ぶが、なぜか翻訳ものはほとんどない。彼なりの読書スタイルかもしれない。

 立ち寄っていく人が増えてきて、安く譲る場合もある。「今は古本屋の店主も兼ねている」と笑う。