綿花栽培などを通じ、東日本大震災の被災農家を支援する「東北コットンプロジェクト」が順調に実を結んでいる。宮城県内の綿花畑で安定した生産量を確保し、商品化への道筋も見えてきた。試行錯誤する生産者、支えるボランティアや商品開発に知恵を絞るアパレルメーカー。8年目を迎えた復興への思いを追う。
(小牛田支局・山並太郎)

<選手ら9人も>
 綿花栽培にはどうしても人手が必要だ。東日本大震災の復興支援事業「東北コットンプロジェクト」は生産農家だけでなく、多くのボランティアに支えられている。
 日本フットサルリーグ(Fリーグ)の「ヴォスクオーレ仙台」(仙台市宮城野区)は支援団体の一つ。今年から植栽、収穫に協力している。
 プロジェクトとチームをつないだのは、フロントスタッフの中島千博さん(31)だった。知人を介して活動を知り、2017年に東松島市の「赤坂農園」で綿花栽培にボランティアとして参加した。
 「素晴らしい取り組みがある」。中島さんの呼び掛けに応え、今年の苗植え作業には選手ら9人が参加してくれた。チームの運営会社役員に、プロジェクトに参加する阿部蒲鉾店(仙台市)の幹部がいたことも追い風となった。

<ロゴ縫い付け>
 チーム関係者の多くも震災の強い揺れを体験している。中島さんは「東北以外で生まれ育った人もいるが、津波に見舞われた沿岸部の打撃は人ごとではない。チームとして復興に力を入れたい」と強調する。
 ヴォスクオーレ仙台トップチームのユニホームの左袖部分。今季からプロジェクトのロゴマークが縫い付けられている。通常なら年間数百万円のスポンサー料が発生する位置。貴重な収入の場を無償で提供した。
 広報担当の宮田卓弥さん(38)は「サポーターの目に入ることでプロジェクトの宣伝になる。プレーを通して復興の願いを伝えたい」。プロとして勝利を追求するだけではない。被災地に根差して戦う意味をチーム全体で共有しつつある。

<高校生が除草>
 支援の輪は教育現場にも広がる。
 8月19日、「赤坂農園」の綿花畑に高校生の姿があった。山梨学院高(甲府市)の生徒会の14人だ。夏空の下、畑の除草などに汗を流した。震災直後、全国の学校が被災地での社会科見学に重点を置く中、同校はいち早くボランティア活動に着目。13年から宮城県の沿岸、内陸部を訪問するだけでなく、綿花栽培の支援を続けている。
 津波で骨組みだけとなった建物に、震災の重い現実を知る。そして畑で力強く伸びる綿花に復興の歩みを感じる。生徒は、自分が携わった綿花で作られたタオルを受け取る日を楽しみにしているという。
 宮城でのボランティアを経験した卒業生が、後輩に活動の意義を説くこともある。善意の伝統は着実に受け継がれつつある。「西日本豪雨の被災地支援に出向いた卒業生もいる。災害時に役立ちたいという心が育っていると感じる」。同校の鳥居英之教諭が明かす。
 地元から、県外から。差し伸べられるたくさんの手が、復興の綿花を優しく包み込んでいる。

[メモ]プロジェクトに賛同する紡績、食品、航空会社、アパレルメーカーなど全国75社の社員らが毎年5月の種、苗付け時期、11~2月の収穫時期に宮城県内を訪れてボランティアで作業に当たる。企業以外に宮城農高や宮城学院女子大、地元の小学校なども参加してきた。年間の参加は延べ500人以上となる。