東日本大震災の津波でいったん失われ、8年ぶりに山元町の家族の元に戻った腕時計が、白石市の時計店店主の修理によって再び動きだした。時計が出てきたことを伝える新聞記事を読み、店主がボランティアでの修理を申し出ていた。

 時計を直したのは秋山時計店の秋山祐吉さん(78)。山元町の介護士亀井繁さん(48)がことし3月11日、津波の犠牲になった妻宏美さん=当時(39)=の腕時計を、宏美さんが見つかった場所で再び手にしたことを伝えた3月22日の河北新報朝刊を読み、亀井さんに連絡を取った。
 時計は約20年前に宏美さんが使っていた。防水だったものの裏ぶたのねじがさびている状態だったため、ねじが折れないよう1日かけて油を染み込ませて作業に取り掛かった。電池が接触する部分や時刻を合わせるボタンのばねなどもさびていたが、これまでに顧客から引き取った時計の部品を使い、2日間かけて動くようにした。
 秋山さんはこの道に入って58年という。「海水に漬かった上、8年が経過していたので難しいと思っていた。自分にできることで喜んでもらえたらと思った」と話した。
 宏美さんの時計があったのは沿岸部にあった自宅から約1.2キロ内陸に入った場所で、一部が地面から出ているのに亀井さんが気付いた。3月30日に秋山さんから時計を受け取った亀井さんは「妻が身に着けていた時計が動き、体の一部が帰ってきたような温かな気持ちになった」と語った。