新型コロナウイルス感染症が拡大する中、地震や津波といった自然災害への備えが改めて問われている。避難所で一層の感染予防策を求められるためだ。東日本大震災から9年が過ぎた東北の自治体は複合的な対策の検討を急いでおり、専門家からは「備蓄など自助の取り組みも重要だ」との指摘も出ている。

 東日本大震災の最大被災地となった宮城県石巻市。災害発生時には計画通りに避難所を開設し、健康状態を確認した上で職員を派遣する方針だ。危機対策課の担当者は「できる限りの対応をするほかない。感染拡大状況に応じ対策を検討したい」との考えだが、備蓄のマスク不足が心配されている。

 岩手県釜石市防災危機管理課の担当者は「避難所でもマスクやアルコール消毒液を用意する」と説明。いわき市は「台風19号の検証と併せて地域防災計画の修正を進めており、起こり得る事態に合わせ見直したい」(危機管理課)と強調する。

 仙台市は「住民の命を守ることを最優先する」(危機管理室)との立場。感染拡大時でも、沿岸部で津波襲来が予測されれば避難タワーへの避難を促す。危機に応じた柔軟な対応を順次検討していくという。

 新型コロナウイルスでは感染者集団「クラスター」の発生が取り沙汰されている。感染症の拡大が懸念される状況下での災害は重層的な備えが重要だが、自治体の態勢は整っていないのが現状だ。専門家は震災の教訓を生かした対策の重要性を指摘する。

 東北医科薬科大の賀来満夫特任教授(感染制御学)は「感染症は災害そのもの。震災時も避難所で感染症の流行が起きる懸念があった」と指摘。当時、消毒液などで一定程度予防できたとの認識を示して「消毒やせきエチケットなどを心掛けてほしい」と訴える。

 東北大災害科学国際研究所の佐藤健教授(地域防災・学校防災)は「震災時は自宅で過ごせる人も不安から避難所に押し寄せた。避難所をパンクさせないためには自助が重要だ」として備蓄を呼び掛ける。

 感染予防の観点から、体調不良の人が過ごす部屋の確保など「保健担当部局と連携して対応を確認する必要がある」とも指摘する。