東日本大震災から10年目を迎える中、被災3県の調査で課題が浮き彫りとなった震災学習は、新型コロナウイルス感染拡大という新たな難題に直面している。学校現場は休校や校外学習の自粛を迫られ、震災を学ぶ時間の確保もままならない。一方で、コロナ禍だからこそ、震災学習の眼目である「生きる力」を身に付けさせようと模索する教育現場もある。

 岩手県宮古市田老の宮古北高(生徒84人)は、1、2年生が5月上旬に道の駅で働く人らに話を聞くフィールドワークを延期した。

 震災に伴う人口減少など地域課題を見つけつつ、生徒自身や地域に対する肯定感を育む計画だった。学校は大型連休が明けて再開したが、中村智和校長は「校外に出て学べる環境ではない」と困惑する。

 学校現場は教科の履修が優先され、震災学習の時間確保が徐々に難しくなっている。宮城、福島両県は新年度の休校が長期化し、全域での休校措置が取られていなかった岩手県内も大型連休中は休校した。

 大船渡市の盛小(児童121人)は、感染拡大防止のため1学期に開催予定だった運動会を2学期に延期。4月下旬~大型連休の休校分の穴埋めに夏休みを削らざるを得ない状況だ。

 2学期に水産加工場の見学や地域の伝統行事と震災復興を絡めた学習を計画しているが、村上千賀子副校長は「震災学習はやりたいが、どうなるか分からない」と悩む。

 逆境下の震災学習だが、岩手県教育委員会は学習の意義を子どもたちに伝える工夫を現場に促している。

 県教委は2012年2月、復興を担う人材を育てる「いわての復興教育」プログラムを策定。災害など困難な状況でも自主性を持って力強く生き抜く子どもの育成を掲げており、「コロナ禍でも身に付けられる」と指摘する。

 4月中旬、各校向けに復興教育と新型コロナ対策を関連付けた文章を出した。子ども自身に予防策や家庭での過ごし方を考えさせる機会をつくることで、「命を守り、予測困難な状況でも自ら判断できる力が備わる」と強調する。

 盛岡市黒石野中(生徒432人)は4月、生徒が部活動ごとの集会で感染予防との両立や個人で取り組めるメニューを考えた。藤岡宏章校長は「中学生なりにしっかり考え、やるべきことを考えさせたい」と生徒の自主性に期待する。
(盛岡総局・片桐大介)