高級すしだねとして知られる岩手県陸前高田市広田湾産のエゾイシカゲガイの出荷作業が26日、始まった。初日は幅5.5センチ以上に育った約2.7トンがトラックに積み込まれ、東京・豊洲や関西の市場へと運ばれた。

 エゾイシカゲガイはトリガイに似た二枚貝で、黄色みがかった身はうま味や甘味がある。生産者の小泉豊太郎さん(72)は「成育がやや遅かったが、味は抜群だ」と太鼓判を押した。今季は9月にかけ、約48トンの出荷を見込む。

 産業用として全国唯一となる広田湾での養殖は1996年に小泉さんが始めた。トリガイの養殖籠にエゾイシカゲガイが交じっていたのがきっかけで、水温変化などに対応できたことから生産を本格化させた。

 東日本大震災で市内の養殖施設は全壊したが、2012年に再開。14年に出荷にこぎ着けた。17年の年間生産量は68トンで、震災前の10年の1.8倍に増えた。

 「広田湾産イシカゲ貝」の名前でブランド化を進めており、今後は年間100トンを目標に掲げている。

 現在は海中を浮遊する幼生を集めて育てる天然採苗が基本で、稚貝の安定的な確保が課題だ。採取数によって生産量にばらつきがあり、18年は53トン、19年は43トンにとどまった。

 広田湾漁協(陸前高田市)は18年に人工的に稚貝を育てる研究を開始。採苗技術の確立を目指している。

 生産者組合の熊谷信弘組合長(64)は「稚貝確保が平準化できれば生産量や漁業者の収入も安定する。新たな担い手の呼び水にもなる」と期待を寄せる。