米国の権威ある文学賞の一つ、全米図書賞が19日発表され、翻訳文学部門で福島県南相馬市の作家、柳美里さん(52)の「JR上野駅公園口」が選ばれた。同部門では2018年、ドイツ在住の作家、多和田葉子さん(60)の「献灯使」が受賞して以来の日本文学の快挙となった。

 英語版のタイトルは「Tokyo Ueno Station」。米国人のモーガン・ジャイルズさんが翻訳した。

 原著は14年に刊行された。現在の南相馬市に生まれた男性が、翌年に東京五輪を控えた1963年、家族を養うために上京。長い出稼ぎ生活の果てに上野公園のホームレスとなる生涯を描く。高度経済成長の光と闇、地方と首都の格差などを浮かび上がらせ、古里を襲った東日本大震災の死者にも思いを寄せる。

 柳さんは受賞決定を受けて、自宅からオンラインで授賞式に参加し「地震と津波と原発事故に遭い、苦難の道を歩んでいる南相馬の人たちとこの喜びを分かち合いたい」と語った。

 柳さんは茨城県生まれ、横浜市育ち。93年「魚の祭」で岸田国士戯曲賞、97年「家族シネマ」で芥川賞。2015年に鎌倉市から南相馬市に転居し、18年から自宅で書店「フルハウス」を営む。