東京電力福島第1原発事故直後、会津若松市に避難した福島県大熊町の小中学3校は義務教育学校となって2023年度、古里の町に戻る。この年を「教育の帰町元年」と位置付ける町の木村政文教育長に、再び興す「大熊の学び」について聞いた。(聞き手は会津若松支局・玉應雅史)

 -人工知能(AI)を活用した個別最適化の教科学習、大熊伝統の読書を基盤に社会的課題をテーマにする探究学習が特徴だ。

 「デジタルとアナログ、多様性と混在がキーワードだ。個々の習熟度、興味関心に対応した学びを保証する。幼稚園を認定子ども園にして新校舎で一体型の施設にするほか、町民の大人が学び直しできる仕組みも考える。町民、外部の人は応援団。常に子ども以外に誰かがいる学校にしたい」

 「極小規模での開校見込みだが、不利だとは考えていない。イエナプラン教育=?=の考え方を参考に逆に強みにしたい。新校舎は図書室を中心に据える計画。蔵書5万冊を目指す。多様な人が行き来する学校、特色ある教育を施設整備にも反映する」

 -原発事故から10年目。ようやく大熊の学校の姿が見えてきた。

 「避難先の会津若松市で学校を再開して10年目。大熊の子の99%が県内外の学校に区域外就学する状況の中で町に戻り、学校を再始動させる。前例のない取り組みは全て手探りだ」

 「大熊で学びたい、学ばせたいという魅力ある学校づくりをする。町民の帰還を促し、移住者を呼び込み、町の復興につなげる。多くの人に関心を持ってほしい。学校名を公募した狙いもそこにある」

 「避難生活が長引くほど帰町は難しくなる。5年後には15歳以下の子どものほとんどは避難先で生まれた子になる。この5年が勝負だ。大熊での学校再開を急ぎたい。学校のない町にはしない」

 -現在、会津若松にある大熊の学校に子どもを通わせる保護者は不安を抱く。

 「丁寧な説明が必要だった。反省しなければならない。住まいや仕事の確保、障害がある子向けの放課後デイサービス機能提供、安心できる子育て環境づくりなどに、町教委、町当局、学校が同じ方向を向いて取り組む」

 「町当局に認識を共有してもらった。保護者とは個別面談を進める。不安を解消し、大熊の学校へ通わせると決めた家庭もある」

 -特色ある教育内容は教員の研修、確保も課題だ。

 「人口減少社会の進展で地方の学校はいずれ存続の課題に直面する。大熊はそのモデル、トップランナーになる。大熊での経験は他でも役立つ。教員にも関心を持ってほしい」

 「周辺市町村の学校との連携も視野にある。AI導入に関心を持つ教育委員会が出てきた。広域で取り組みを共有できれば教員の研修、確保の道は開ける」

[イエナプラン教育]ドイツ発祥で、1960年代にオランダで普及した教育実践法。異なる学年がグループで助け合い、対話を重視して学ぶ。教科学習は教員と相談して自分の計画を立てて進める。教科横断の総合学習は実際の出来事をテーマに子どもが自ら問いを立てて探究する。日本初のイエナプラン教育校は2019年、長野県佐久穂町に私立大日向小が開校。広島県福山市が22年4月の公立校開校を計画する。