東京電力福島第1原発事故で生じた国の基準(1キログラム当たり8000ベクレル)を超える指定廃棄物の最終処分場建設候補地の一つとされた加美町は、基準以下の汚染廃棄物を県内の自治体で最も多く抱える。約7500トンで、県全体の2割だ。
 このうち約3500トンのほだ木は自然に腐朽させる林地還元が進む。懸案は約4000トンの牧草。町が約半分を旧宮崎田代放牧場で集約管理し、残りを農家94戸がそれぞれ保管する。

<焼却求める声も>
 町は来年度から5~7年かけ、400ベクレル以下の約1150トンをすき込みで減容化する方針。10月30日、汚染牧草を保管する農家らを対象に説明会を始めた。
 すき込みは、汚染牧草を細断して農地に混ぜ込む方法。農地で牧草を育て、家畜の飼料にする。放射性物質が牧草に移行してもごくわずかとされ、国は400ベクレル以下なら農作物の生産に影響はないとする。県内では、登米市が本年度に約400トンを20ヘクタールにすき込む計画で、8月下旬から作業を進めている。
 町は、農家が保管する牧草は各農家の農地にすき込む方針で、必要な41ヘクタール分の確保が課題だ。昨年度実施したアンケートで「すき込む農地がある」と答えた保管農家は半数強の52戸にとどまる。保管農家周辺の住民らの理解を得るのも、困難が予想される。
 このため住民からは、試験焼却が始まった大崎圏域の焼却処理に加わる形で、早期処分を求める声も上がる。町は将来的な焼却の可能性を否定していないものの、焼却による早期処分の実現には懐疑的だ。

<施設なく「弱み」>
 大崎圏域の焼却は、大崎地域広域行政事務組合が運営する一般ごみの焼却炉や最終処分場で行われる予定で、町には関連施設がない「弱み」がある。指定廃の最終処分場建設に反対した経緯もあり、焼却にかじを切るのは難しい状況だ。
 現段階で組合が想定する大崎、涌谷、美里の3市町分の焼却だけで5年以上かかる見込みで「仮に加美町分もとなれば、その後まで保管が続くことになる」(町の担当者)からだ。
 一方で、400ベクレル以上の牧草約2940トンの処理法も決まっていない。
 このうち農家が保管する約1280トンは牧草を育てた元の農地にすき込むことができる。町は必要に応じて、実証実験を改めて行う考えだが、町が田代放牧場で管理する約1650トンは元の農地が特定できない。現行のルールで、国は焼却以外の処理法を示しておらず、町単独では身動きが取れない状態に陥っている。
 猪股洋文町長は「本来は8000ベクレル以下の廃棄物も東電と国が責任を持って処理すべきだ。地方自治体に押し付けている」と憤る。
 その上で「誰にとっても良い方法はないが、住民や自治体の間で対立してはいけない。今取り得る手法を粛々と進めたい」と述べ、現状では、すき込みが町にとって唯一の道と強調する。(加美支局・佐藤理史、登米支局・小島直広)

[メモ]大崎地域広域行政事務組合を構成する大崎市と色麻、加美、涌谷、美里の4町が保管する国の基準以下の汚染廃棄物は計約1万5000トン。大崎、色麻、加美、涌谷の1市3町は400ベクレル以下の約8600トンをすき込みや林地還元で処理する方針。試験焼却で安全性が確認された場合、大崎の400ベクレル超分に涌谷、美里を合わせた約3600トンが本焼却に回る見通し。色麻、加美の400ベクレル超約3000トンの処理方法は未定。