新型コロナウイルスの感染拡大で、東北電力女川原発2号機(宮城県女川町、同県石巻市)の再稼働の可否を問う「地元同意」の手続きが停滞している。村井嘉浩知事らが政府に要請されて約2カ月半、有力な判断材料となる県の有識者検討会の意見集約時期は白紙のままだ。重大事故時を想定した避難計画への影響も指摘され、反対派は「急ぐ理由がない」とけん制する。

 再稼働に批判的な県内18の市民団体は14日、地元同意手続きの停止を県に申し入れた。「女川原発の再稼働を許さない!みやぎアクション」の篠原弘典世話人は「手続きを急ぐあまり、形だけ意見を聞くようなことはしないでほしい」と訴えた。

 県にくぎを刺したのは、2号機の安全性を検証する有識者検討会(座長・若林利男東北大名誉教授、10人)が大詰めを迎えているためだ。

 検討会は、東日本大震災で被災した原発の安全性や新規制基準を踏まえた対策について議論を重ねた。3月23日の第23回で論点整理を終え、取りまとめの最終会合を残すだけとなった。

 県は4月中の開催を予定したが、県内で新型コロナの感染者が増加。16日に緊急事態宣言が全国に拡大され、県の動きはストップした。

 検討会の開催に当たっては密閉、密集、密接の「3密」を避ける必要がある上に、県外在住の委員も複数いる。県原子力安全対策課の伊藤健治課長は「緊急事態宣言が解除されても、すぐに同意の手続きを進めるのは難しい」と説明する。立地市町と原発30キロ圏内を対象にした住民説明会も開催未定だ。

 新型コロナの余波は、30キロ圏内の住民避難計画にも及ぶ。

 計画では、原発の冷却機能が喪失した緊急時、住民に対して車両避難や屋内退避を要請している。避難者が3密の環境に置かれれば、感染の懸念は拭えない。30キロ圏外にある避難先の施設でも、十分な間隔の確保が求められる。

 計画の実効性があるかどうかは、再稼働の議論を左右しかねない。野党系の県議21人でつくる「脱原発をめざす県議の会」の佐々木功悦会長は「県民の命に関わる問題。感染防止策を徹底する場合、計画自体を考え直す必要がある」と主張する。

 東北電は4月30日、2号機の安全対策工事の完工時期を2020年度から22年度に延期すると発表。再稼働も先送りとなった。市民団体の関係者は「県は幅広い意見に耳を傾ける時間ができたと捉えるべきだ。同意に向けた手順を省略せず、丁寧に進めてほしい」と話す。