河北新報社と東北大が宮城県内の沿岸12市町の住民を対象に実施したアンケートで、津波が起きた場合、避難に車を使うと考えている人が3割を超えた。東日本大震災では渋滞する車列を津波がのみ込み、車内から発見された遺体は、岩手、宮城両県で700体を超える。一方、要援護者の搬送や、近くに高台がないなどの理由で車が必要な人もいる。教訓をどう生かせばいいのか。防災の専門家2人に調査結果を読み解いてもらった。(「いのちと地域を守る」取材班)

◎利用ルール取り決めを/東北大災害科学国際研究所副所長・今村文彦さん

 −車避難を希望する人が31.2%というアンケート結果をどう見るか。

 「震災では各地で渋滞が発生した。避難した人のうち車を使った人は国の調査で57%に上る。今回は地域ごとに差があるが、対策を取らないまま車を使えば、渋滞が繰り返されるのは目に見えている。非常にまずい」

 「その例が宮城県沿岸に津波警報が出た昨年12月7日だ。平日の夕方で車の利用が多い時間帯だったこともあり、特に石巻市などの市街地中心部で渋滞が深刻だった」

 −車避難の理由は「安全な場所まで遠い」(52.4%)「家族や親戚を避難させる」(43.5%)が上位だった。

 「それでも車避難を減らさなければいけない。高台がない現状を改善し、徒歩で逃げてもらうために避難タワーなど施設整備を進めるべきだ」

 「ハード面の対策は時間的にも財源的にも限界がある。いつ大規模な余震が起こるか分からない現状では、ソフト面の取り組みも始めなければならない」

 −具体的な対策とは。

 「町内会や学校といった小さな単位を基本に、避難計画や車利用のルールを策定する。避難手段の選択は個人の問題であり、行政は『車を使うな』と強制できない。実効性確保のため、地域住民が主体となって議論することが肝心だ」

 「命を守るための話し合いであることを認識し、多くの人が参加すれば計画やルールの周知と徹底につながる。できれば地域の企業も交え、具体的に合意を形成してもらいたい。財産や移動手段である車を乗り捨ててもらうことも必要になる。最終的に命とどちらが大切かということだ」

 −仙台市の津波避難施設整備検討委員として、車での避難率を震災時の73%から20%に抑制すれば、45分以内に避難が完了するシミュレーション結果を示した。

 「客観的な数字が比較でき、合意をつくるための道具となるのがシミュレーションだ。地域の議論でも数字が重要な基盤となる。家族数や車の保有台数、車避難が必要な要援護者らの人数の把握を出発点にしてほしい」

 −震災の前後で車避難への認識は変わったか。

 「あまり変わらない。車避難は有効かもしれないが、運転自体に危険が伴うことを再認識した。周囲の音や状況が分かりづらく、テレビやラジオでは自分が逃げている場所の情報が流れない。それらを踏まえた上で車避難が欠かせないのなら、避難の計画やルールをつくらなければならない」

【河北新報社と東北大が実施したアンケート結果概要】今後の津波避難の手段に車を挙げたのは31.2%、徒歩は24.4%だった。「避難しない・必要がない」も27.5%に達した。避難行動の手段を聞いたところ、東日本震災発生時は車が46.9%、徒歩が32.1%。昨年12月7日の避難は車が19.6%、徒歩が16.3%で、いずれも車が徒歩を上回った。どちらの避難時も車使用者の約4割が渋滞を体験した。

<いまむら・ふみひこ>東北大大学院工学研究科博士課程修了。同大災害制御研究センター教授を経て2012年4月から現職。専門は津波工学。山梨県出身。51歳。

[英訳] http://www.kahoku.co.jp/special/spe1151/20150218_02.html