◎乗り捨て可能な対策を/東洋大准教授・関谷直也さん

 −アンケートでは、今後、津波が来れば、車で避難すると答えた人が全体の31.2%を占めた。

 「車避難する人の理由を見ると『安全な場所まで遠い』『家族や親戚を避難させる』が上位だった。それぞれ合理性があり(3割超という回答は)自然な結果と受け止めている」

 「震災時に車避難した人は半数以上。車で逃げなければ助からなかった人もたくさんいた。国が津波からの避難手段に『原則徒歩』と併せて車避難を容認したのは、こうした現実を無視できなかったためだ」

 −車避難する理由には「車が大切な財産だから」も21.4%あった。

 「ほかの理由より割合が低い。津波避難施設の整備が遅れる被災地にあっては、財産を守るというより、命を守るために車避難が欠かせないというのが現状だろう」

 −車避難は渋滞の危険が伴う一方、要援護者を運ぶため車が不可欠な人もいる。行政は、車の必要がない人は利用を控えるよう呼び掛けている。

 「車避難は掛け声だけでは抑制できない。災害時に『渋滞しない地域』では車を使っても構わないが、日ごろから車が混雑する『渋滞リスクが高い地域』は、要援護者を乗せた車も間違いなく渋滞につかまる」

 「問題解決の鍵は、車避難の抑制ではなく、渋滞が起きても避難できるよう、地域のリスクを減らすことにある」

 −リスクを減らす具体策は何か。

 「渋滞が起きやすい地域をあらかじめゾーニングして地域住民に示しておき、車を乗り捨てた後、徒歩で逃げ込める避難ビルや津波タワーを重点的に整備してほしい」

 「津波が迫る中で渋滞に直面すると、運転手は車で逃げるべきか、車を捨てて高台に上るべきか判断がつかない。後続車両に迷惑を掛けることへの気兼ねもある。ちゅうちょなく車を乗り捨てられる路側帯やモータープールを設け、津波避難場所までの誘導サインを掲げることが大事だ」

 −被災地の現状をどう見ているか。

 「ダンプカーなど工事車両の多さに驚かされる。特に、沿岸部で働く復興作業員は津波の危険にさらされている。震災の津波到達地点を示した道路標識を見るようになったが、避難場所を知らせるサインはまだ不十分に映る」

 「住民だけでなく、たまたま通りかかった人の命も守ることができるよう、できる限りの対策をハード、ソフト両面で講じてほしい」

【河北新報社と東北大が実施したアンケート結果概要】車避難の理由(複数回答)は「安全な場所まで遠く、車でないと間に合わない」が52.4%と最多で「家族や親戚を避難させるため」43.5%、「普段、車を使って行動しているから」32.9%などが続いた。地域別では、仙台圏以南の場合、仙台と多賀城両市を除き避難場所が遠いことがトップ。石巻市と女川町は、家族や親戚の避難が最も多かった。

<せきや・なおや>東大大学院博士後期課程単位取得中退。東大大学院情報学環助手、東洋大専任講師を経て10年4月から現職。専門は災害情報学、社会心理学。新潟市出身。37歳。

[英訳] http://www.kahoku.co.jp/special/spe1151/20150218_01.html