東北大青葉山キャンパス(仙台市)に2023年度稼働予定の次世代型放射光施設に対し、東北の中小企業が関心を高めている。先進地の視察や試験的な利用を通じて「巨大な顕微鏡」との距離を縮め、将来の利活用や関連産業への参入を視野に入れる。

 青森、岩手、宮城、秋田4県の製造業関係者ら約40人が昨年12月17日、大型放射光施設「スプリング8」(兵庫県佐用町)を視察した。広大な敷地に円形加速器(1周約1.4キロ)や放射光を取り込む57本のビームライン、測定装置などが並ぶ。

 「スプリング8は産業利用のバラエティーに富んでいる」。運営する理化学研究所放射光科学研究センターの田中均副センター長が一行に説明する。企業や大学の研究者ら年間約1万6000人が利用し、低燃費タイヤ、虫歯に効くガムなどの成果が生まれている。

 自動車部品などを製造する岩機ダイカスト工業(宮城県山元町)の担当者は「微量の元素を測定できれば、技術力向上につながるのではないか」と印象を語る。

 東洋刃物(富谷市)は19年度、スプリング8を試験利用する仙台市の事業に名乗りを上げた。加工した刃の先端に生じる微小なささくれのような物「バリ」の硬さや大きさを解析する。

 高橋純也取締役は「バリを抑制、除去する方法を試行錯誤している。より高精度で高品質な刃物を提供したい」と説明。試験利用の結果を踏まえ、仙台の施設を活用するかどうか本格検討するという。

 青葉山キャンパスでは、19年度内に施設の基本建屋の建築が始まる見通し。東北大と産学連携組織の光科学イノベーションセンター(仙台市)は昨年11月に共同研究部門を開設しており、計測技術の研究開発や人材育成などを目指す。

 施設周辺には研究開発拠点のほか、研究成果を製品化する生産施設が集積し、経済効果は10年間で1兆9000億円に上るとの試算がある。

 秋田県産業技術センター(秋田市)は18年、高エネルギー加速器産業への参入に向けて研究会を設立した。参画企業の一つで、スプリング8を視察した長沼製作所(にかほ市)の長沼彰社長は「地場の溶接技術で対応できる確信が持てた」と話し、次世代型施設の利用権付き出資への加入を前向きに検討する。

 センターの近藤祐治主任研究員は「東北は技術力のある企業がたくさんあるが、まだ多くは放射光利用に精通していない。研究機関などが企業の課題を知り、継続的にサポートすることで関わる企業が増えるのではないか」と見込む。