◎東北大病院整形外科副科長 相沢俊峰准教授

 近頃、新聞の下段に腰部脊柱管狭窄(きょうさく)症に関する書籍の広告をよく目にします。落語家やジャーナリストなど多くの有名人が手術を受けた、というニュースをご覧になった人も多いでしょう。腰部脊柱管狭窄症とは一体どのような疾患なのでしょうか?

■加齢により変化

 背骨の中に脳からの指令を手や脚に伝える太い神経=脊髄が通っているのはご存じでしょう。背骨は上から頚椎(けいつい)、肋骨(ろっこつ)が付いた胸椎、腰椎、そして骨盤をつくる仙骨からなります。これらの背骨の後ろ側には「脊髄を通すための管=脊柱管」があります。この脊柱管は主に加齢により、その前後左右を囲む靱帯(じんたい)、椎間板、関節が厚くなったり、突出したりして狭くなることがあります。

 実は、脊髄は上位の腰椎で終わり、それより下には「馬尾(ばび)」という神経が続いています。従って腰椎で脊柱管が狭くなると、馬尾あるいは馬尾から分かれ下肢に至る神経の元、「神経根」が圧迫されます。よく誤解されるのですが、背骨や関節など運動器の病気では、エックス線や磁気共鳴画像装置(MRI)で狭い、軟骨がすり減っている、という所見だけでは病気とは言えません。プラスそれによる症状を出している状態を病気として扱います。脊柱管が狭くても症状がなければ病気ではなく、治療の必要もありません。

 この腰部脊柱管狭窄症は東北大整形外科の第3代教授若松英吉先生が、1970年に日本に初めて紹介しました。その後人口の高齢化とともに患者数が増え、東北大とその関連病院が行う年間4600件の脊椎外科手術のうち、実に3分の1を占める最も手術数の多い脊椎外科疾患です。

■保存療法も手段

 症状は腰痛と下肢のしびれ・痛みや脱力で、腰掛けているとあまりなく、腰を伸ばして立っていたり歩いたりすると出てきます。これを「間欠(性)跛行(はこう)」と言います。同じように歩行により下肢のしびれ・脱力などを生じる閉塞性動脈硬化症と異なり、腰を曲げて休むとしびれや痛みが軽くなるのが特徴です。

 症状が軽いうちは、長い距離を一気に歩かず時々休んで腰を曲げる、長く立つときには片脚を台に乗せて腰の後ろぞりを軽くするなど日常生活の工夫や、投薬などの保存療法で改善します。

 保存療法が効かない、痛みで数分しか歩けない、脚の筋力が落ちている、など症状が重い場合には手術をお勧めすることもあります。手術法も患者さんの病態によってさまざまです。思い当たる症状がある人は、まずお近くの整形外科で相談してみてください。