◎東北大病院 咬合回復科科長 佐々木啓一教授

 虫歯や歯周病などの痛みの原因がないのにもかかわらず、歯や歯肉の痛みを感じている状態を、非歯原性歯痛(ひしげんせいしつう)と呼びます。虫歯や歯周病などが原因の歯痛=歯原性歯痛に対して、歯に原因がない歯痛という意味です。非歯原性歯痛は、歯痛全体の2.1~9.0%を占めるといわれています。歯に原因がないわけですので、歯の治療を行っても、抜歯しても、痛みは変わりません。

■鈍い痛みが続く

 いろいろな痛みが出ますが、代表的なのは次のようなものです。

 (1)鈍い痛みがずっと続いている。でもその歯をたたいても、何をしても痛みは出ない(2)だいぶ前に歯を抜いて傷は良くなっているのに、もう無いはずの歯が痛い気がする(3)目がチカチカして頭が痛くなる時に、歯も痛くなる。吐き気もする(4)目の奧の猛烈な痛み、涙や鼻水が出て、歯も痛くなる(5)鼻が詰まっている感じがして、同じ側の上の奥歯が痛む(6)胸が痛くなると、歯も痛くなる-。

 いろいろな原因で引き起こされますが、最も多いのは「筋・筋膜性歯痛」といわれる筋肉の凝りによって生じる歯の痛みです。非歯原性歯痛全体の50%程度を占めます。くいしばりや歯ぎしりなどにより、頬の筋肉やこめかみの筋肉などのコリが進んで痛みが出るようになると、離れた所にある歯に痛みを感じるというものです。この時、痛い筋肉を指で強く推すと、筋の痛みとともに歯の痛みが生じることが特徴です。

■対応難しい疾患

 また歯の痛みを伝える神経が傷ついてしまうと、歯は悪くないのに歯の痛みを感じることがあります。神経障害性歯痛と呼ばれます。三叉(さんさ)神経痛、帯状疱疹(ほうしん)後神経痛などに伴って、あるいは抜歯や歯の神経の処置後に見られます。周りの歯茎の感覚もおかしくなっていることも多いです。その他に、古くから知られていますが、心筋梗塞や狭心症などの心臓疾患に伴って生じる歯痛や、片頭痛、群発頭痛などに伴うもの、上顎洞炎に伴うものなどがあります。

 非歯原性歯痛は歯科医師にとっても対応に苦慮する疾患です。なぜなら、歯に痛みの原因がないことを確認するのはとても難しいことだからです。さらに、その原因を診断するには専門的知識が必要とされます。治療を続けても歯の痛みが変わらないようなとき、あるいは先に書いたような症状があるときには、歯科医師に歯の痛みのみではなく全ての症状をお伝えください。大学病院などの専門医を紹介してくれます。専門医が診断し、歯科で対応すべきものであれば歯科にて治療を行いますし、頭痛や心疾患などが疑われる場合には医科の専門科に紹介いたします。