◎東北大病院 小児外科副科長 和田基准教授

 赤ちゃんや小さいお子さん(新生児、乳幼児)にみられる肛門、お尻に関連する症状の中で、肛門の周りが赤く腫れる、膿(うみ)が出るという症状は生後6カ月未満の乳児に比較的よく見られる症状で、女の子よりも男の子によく見られます。適切に治療すれば1~2歳ごろまでに、多くの場合は良くなります。

 肛門の中、肛門と腸の境目にある肛門陰窩という部分に開いている肛門腺に細菌が侵入、感染し、肛門の周りに膿がたまった状態を肛門周囲膿瘍(のうよう)と呼びます。自壊して膿が出ることもあります。肛門の左右にできることが多く、1カ所だけでなく2~3カ所にできることもあります。健康であっても生後間もない乳児では肛門腺などの腸管免疫が未熟なため発症すると考えられています。

■漢方薬など処方

 便が出た後に肛門周囲のお尻をお湯で洗い流すなど肛門周囲を清潔に保つことにはある程度の意味はあると思われますが、細菌が侵入するのは肛門の外側の皮膚ではなく内側にある肛門腺なので肛門やその周りの皮膚を消毒する、抗菌薬の入った軟こうを塗るなどの治療に効果は期待できないと思われます。内服の抗菌薬が処方されることもありますが、肛門局所での効果は限定的で、腸内細菌のバランスを崩し下痢になってしまうこともあるので、炎症が強く発熱などを伴う場合にのみ短期間使用するのがよいでしょう。通常は炎症を抑える効果のある漢方薬を処方し飲んでもらい、下痢や便秘は症状を悪化させることがあるので、便性を整えるために整腸剤もよく処方されます。これらの治療で良くならず、症状が強い場合には切開し、たまった膿を出すことが必要なこともあります。

■繰り返すことも

 感染、炎症が治まった後に肛門陰窩と膿瘍を切開あるいは自壊した皮膚の間に瘻管(ろうかん)という細い管ができて、肛門陰窩から細菌が入りやすい状態になり、このような状態を乳児痔瘻(じろう)と呼びます。肛門近くの皮下に瘻管が硬いひも状の組織として触れるようになります。肛門周囲膿瘍や瘻菅からの排膿を繰り返すこともありますが、大人の痔瘻とは異なり、手術が必要となることはまれで、1歳前後までに自然によくなることがほとんどです。便性を整える整腸剤とともに全身状態を良くして体力をつける効果がある漢方薬などを処方し、痔瘻が軽快し、肛門周囲膿瘍が再発しなくなるまで継続します。

 2~3歳をすぎても再発を繰り返す場合や、肛門潰瘍や浮腫状皮垂などの肛門病変を伴う難治性の重症例では、クローン病などの消化器疾患や慢性肉芽腫症などの免疫不全などに合併することもあるので、専門の施設での検査、治療が必要となることもあります。