◎東北大病院 保存修復科 八幡祥生助教

 大人の歯(永久歯)の成長途中(歯根未完成歯)で細菌感染が生じ、成長が止まってしまうケースに対し、歯の成長に関わる幹細胞などを刺激して、歯の神経と呼ばれる歯髄組織の修復と歯の成長を促す「再生歯内療法」が考案され、実用化されています。

 この治療法は、東北大歯学部OBの歯科医師・岩谷真一先生が世界に先駆け、2001年に発表した症例報告をきっかけに開発されました。20年近くたった現在、歯根未完成歯に対する治療のパラダイムシフト(価値観の大転換)とみなされ、世界中で標準治療となりつつあります。

■細菌侵入し壊死

 永久歯は6~12歳のころに乳歯から生え変わります。永久歯が口の中に現れても、実は歯茎の中ではまだまだ成長途中にあり、歯の根っこ部分(歯根)が形成されていきます。この歯根は3年ぐらいかけて長さと厚みを増していきます。歯髄組織は歯根の成長に深く関与しています。

 歯根の成長期間中に、虫歯や外傷などによって歯髄に細菌が侵入すると、歯髄の壊死(えし)や、場合によっては炎症が顎の骨まで広がることがあります。顎の骨まで炎症が広がってしまうと、顔面部の腫脹(しゅちょう)や膿(うみ)が出てくるようになり、歯髄の機能が失われ、歯根の成長は止まってしまいます。

 歯根未完成歯は、歯根の構造的欠陥により、かむ力に耐えることが困難となり、将来的に歯が折れたり、ぐらついたりして抜歯に至る原因となります。このような問題は小中学生の頃に生じるため、その後、長期間にわたって、歯の問題を抱えることになってしまいます。

■形態異常も原因

 歯根未完成歯が歯髄感染を起こす原因には、虫歯や外傷以外に形態異常もあります。特に、われわれ日本人は下顎の歯に、歯根未完成歯で歯髄感染を起こすリスクが高い形態異常、「中心結節」を有していることが多く、折れると再生歯内療法が必要になる症例が多いとされています。

 この治療は、通常の根の治療(根管治療)と同様、治療する歯の周りをゴムのシートで覆うようにして行います。歯の中の感染源を除去、消毒した後、再生を促す材料「ケイ酸カルシウムセメント」を歯根の中に充填(じゅうてん)します。

 再生歯内療法を必要とする歯根未完成歯を有するのは、ほとんどが小中学生で、その後の長い将来にわたって、少しでも安心して歯を使用するための治療方法です。お子さんやお孫さんが、歯科医から「歯の神経が死んでいる」「膿を持っている」などと指摘を受けたことがある方は、かかりつけの歯科医または当院保存修復科にご相談ください。