◎東北大病院 内部障害リハビリテーション科 原田卓准教授

 ここ数年、高齢者の「サルコペニア」が話題となっています。耳慣れない言葉かも知れませんが、「筋肉量が減少し、筋力や身体機能が低下している状態」を示す言葉です。サルコペニアと診断されたにもかかわらず放っておくと、移動能力や瞬発力、歩行能力が低下して転倒しやすくなり、日常生活動作機能の低下にも至ります。

 日本人をはじめとするアジアの高齢糖尿病患者は、健常高齢者に比べてサルコペニアの割合が明らかに多くなっています。栄養不足からくる「やせ」の傾向もあり、サルコペニアを改善するには運動だけでは不十分です。きちんと食べて運動することが重要です。

■タンパク質摂取

 厚生労働省が発表した2020年版の「日本人の食事摂取基準」によると「フレイル(虚弱)およびサルコペニアの発症予防を目的とした場合、65歳以上の高齢者は、1日に少なくとも、体重1キロ当たり1グラム以上のタンパク質を摂取することが望ましい」とされています。現時点では、特定のタンパク質や食品などを推奨する十分な根拠は得られていないので、安易に広告などに飛び付かないでください。また、腎不全など腎機能が低下している場合は、主治医の先生に相談の上、食事療法をしっかり守ってください。

 サルコペニアのための運動療法は、従来から広く行われている散歩やジョギングといった有酸素運動よりも、筋肉に負荷をかけて行うレジスタンストレーニング(筋トレ)がより効果的です。この筋トレは、腹筋やダンベルを用いた訓練、スクワットなどです。天候に関係なく自宅で行うことができます。

■息止めず筋トレ

 筋トレを行う際に注意していただきたいのは、「決して息を止めず、呼吸しながら行う」ということです。もちろん、散歩などの有酸素運動も組み合わせて行うことが重要です。

 転倒予防を含めたバランス運動も、生活機能の維持・向上に有用です。片足立位保持、ステップ運動といったものです。しかし、自己流は禁物です。運動療法により、低血糖が起きる可能性もありますので、必ず主治医の先生に相談した上で、自分に合った運動療法を確認してから行ってください。

 運動療法を継続するには、仲間をつくって家族や友人と行うとよいでしょう。最初から無理はせず、続けられる程度の種類・強さ・時間から始めてください。自信が付いたら徐々に強くし、種類を増やしながら長く継続して、いつまでも若々しく暮らしていただきたいと思います。