うららかな朝。「春のおいしいものはいろいろあれど、春の景色もいいね」なんていいながら、2人は春の遠足に出かけた。仙台駅前から仙台市営バスに乗って約25分。降り立ったのは仙台市野草園(太白区)である。

 私たちと一緒に下車した女性グループは早速、園内巡りに向かう様子で、一方いやすこはというと、建物入り口を入ってすぐの「どんぐり庵(あん)」へ直行。そしてやっぱりここに来たら座りたいテラス席へ。「皆さんに人気で、テラス席から埋まっていくんですよ」と笑顔で話すのはリーダーの鎌倉泰子さん(50)。どんぐり庵は、仙台市の委託を受けた仙台市公園緑地協会が運営している喫茶・休憩処だ。

 屋内の席からガラス戸を開けるとテラス席になるが、そこは展望デッキとなっていて、青空の下、気持ちいい風景が広がる。手前には野草園、遠くには泉ケ岳、晴れた日には栗駒山まで見えるという。さらに、鳥たちの餌台や水場が建物の前に置かれ、小鳥たちが大きなモミの木との間を行ったり来たりする様子が見えて、まるで春の楽園デッキだ。「朝、出勤してきて掃除する時から気持ち良くて、働くのも楽しいんですよ」と、スタッフの庄司久美子さん(61)、沢口智恵子さん(62)もにこやか。

 お店の11時オープンと同時に、園内巡りを終えた人やここの景色と食事を楽しみにしている人がやってきて、3人は注文に応じて手早く料理を提供していく。聞いていると、鴨そば、山菜そば、たこ焼き、ソフトクリームなどが人気のよう。

 私たちも早速注文することに。画伯は山菜そばと食後にぜんざい、私は鴨そばと塩アイスを注文。カウンターで番号札をもらい、呼ばれるまで待つシステムだが、待つ間も緑や花の香りまで含んだように豊潤な空気を深呼吸だ。番号が呼ばれ、テーブルに運んできて、さぁ、いただきます。「わぁー、この山菜そば、山菜たっぷり」「鴨肉もあっさりしてて、汁もだしが効いてるね」と口々に。目の前の餌台にはヤマガラがやってくるし、近くではコンコンとキツツキの音。春の景色の中、みんな一緒に食事時だね、と幸せ感が増す。

 食べ終わった2人を待っててくれたのは、野草園の園長・早坂徹さん(51)。園内を一緒に回ってくださった。足元には、春を告げるキクザキイチゲやアズマイチゲがかれんな姿を見せる中、教えてもらわなければ見逃してしまいそうな、コチャルメルソウといったちっちゃな花たちも。見上げるとヒヨドリがツバキのミツを吸い、シジミチョウの仲間がヒョウガミズキの枝先で日なたぼっこしている。「これからの季節はクマガイソウ、シラネアオイ、ハンカチの木の花などが咲きます」と早坂さん。

 巡っていると、カメラを持った男性や芝生広場でくつろぐ若い女性たち、小学生の男子2人組が案内プレートの番号探しを楽しむ姿も。さっきどんぐり庵で出会ったおばあちゃんとママと子どもの家族連れも、同じようにそれぞれがこの自然の園を楽しんでいると言ってたっけ。

 新型コロナウイルス対策で野草園は5月10日まで休園。どんぐり庵もそれに合わせて閉まっているけれど、再開したら、また行きたい。そのときは、食後のデザートは園内巡りの後にしよう。どんぐり庵を2回楽しむために。

◎おぼえがき/野草園 地形を生かし展示

 仙台市南部の丘陵地大年寺山にある野草園は、起伏に富んだ地形を生かし、東北地方の高山から海岸まで自生する代表的な植物を生態に合わせて植栽展示した、全国でもあまり類を見ない植物園だ。

 開園は1954年7月。戦中戦後の混乱期に荒らされた緑の保存と、緑地の復興計画の手始めとして誕生した。どんぐり庵のテラス前の見上げるようなモミの木も、その時に植樹されたもの。9万5000平方メートルの園内を巡れば、海辺の植物区、薬草区、高山植物区、さらに彫刻広場や芝生広場など、郷土の豊かな自然に親しみ、触れ合うことができる。コケ類約120種、シダ類60種、草本約500種、木本約370種で、中には絶滅危惧植物も多く、丁寧な手入れ・管理が行われている。

 5月10日まで、新型コロナウイルス感染防止のため休園。取材は3月下旬。開花などの旬情報は、仙台市野草園のホームページの野草園スタッフブログで見ることができる。

 土地には、その土地ならではの食があります。自他共に認める「いやすこ(仙台弁で食いしん坊のこと)」コンビ、仙台市在住のコピーライター(愛称「みい」)とイラストレーター(愛称「画伯」)が、仙台の食を求めて東へ、西へ。歩いて出合ったおいしい話をお届けします。
=次回は5月11日掲載=