仮設住宅へのペット同伴が原則として禁止されている宮城県気仙沼市で、同市渡戸の渡戸仮設住宅は唯一、土地の提供者の計らいにより屋外でペットを飼うことができる。身を寄せる9世帯のうち4世帯は、ペットがいるために避難所に入れず壊れた自宅にとどまらざるを得なかったり、車中泊を続けたりした世帯だ。

 無職の畠山敏雄さん(68)、喜代恵さん(62)夫妻は、ミニチュアダックスフントの雄「ムサシ」と暮らす。ムサシは日中は敏雄さんの膝の上から離れないが、夜になると喜代恵さんの布団に潜り込んでくる甘えん坊だ。

 被災後、2011年9月中旬に渡戸住宅に入居するまでの半年間、2人は長男とムサシと、津波で1階が大破した同市太田1丁目の自宅2階で暮らした。

 大勢の被災者でごった返す避難所には、ムサシを連れて行けなかった。4月上旬、市に仮設住宅への入居を申し込んだが、「ペット連れはだめ」とあっさり断られた。

 自宅は気仙沼港からわずか100メートルの場所にある。震災後、戻って暮らす人はなく、4月中旬に電気が通っても、夜は辺りが真っ暗だ。「本当に怖かった」と喜代恵さんは振り返る。

 気仙沼市は仮設住宅でのペットの飼育を原則として禁止しているが、近所の了解を得ることや室内飼いなどの条件を守る場合に限り認めるようになった。畠山さん夫婦には8月末、渡戸住宅への入居許可が出た。

 ペットを飼っていない住民も動物に寛容で、畠山さんは「周囲に遠慮しながら飼っている他の仮設住宅に比べて、恵まれている」と思う。

 この仮設には避難生活で、同様の悩みを抱えた世帯が集う。アルバイト男性(52)は、避難所になっていた気仙沼市民会館の駐車場で半年近く、飼い犬とテント生活を送った。

 畠山さんは、震災で大勢の人が住む家を失う中、市の担当者がペットのことまで気が回らないことや、動物を好きな人ばかりではないことを理解している。

 それでも、ペットは飼い主にとって、家族の大事な一員。「自分たちも家をなくした被災者。『好きで飼っているんだろう』などと簡単に切り捨てないでほしい」というのが率直な思いだ。=2011年11月15日河北新報
          ◆         ◆         ◆
 東日本大震災の直後から、被災地で暮らす市民の課題を取り上げた河北新報連載「焦点」。震災7年の節目に、発生翌年までの主な記事をまとめました。
=肩書や年齢は掲載当時のものです。=